日本で唯一!学費も食費も無料の医大、それが賢者の学び舎!

マンガ

更新日:2019/11/15

『賢者の学び舎』(山本亜季/小学館)

 学費ゼロで医者になれる! 防衛医科大学校を舞台にした医学部青春ストーリーが『賢者の学び舎』(山本亜季/小学館)だ。

 主人公の真木賢人(まきけんじん)は、「誰にも頼らずに医師になる」ために、自衛隊のお医者さんの養成組織である防衛医大の門をくぐる。

 そこに集まったのは、さまざまな理由で自衛隊の医師を志す若者たちだ。彼らと賢人は医療を学びつつ、自衛隊ならではのキツい上下関係や訓練を経験し、成長していく。

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 この秋、4巻が発売され、ますます盛り上がってきた本作。このレビューは、最初に学び舎である防衛医大について説明する。

■知られざる“自衛隊のお医者さん”育成機関

 防衛医大は医師たる自衛官の育成機関である。入学金と授業料は無料。さらに全寮制で食費もかからない。そのうえ学生は毎月の給与(防衛省職員としての手当)を受け取れる。寮生活は大変かもしれないけど医者になるにはお得すぎ! バラ色の医学生生活が送れる! そんな風に考えるかもしれないが、ところがどっこい、である。

 本稿のライターの知り合いで、所沢(防衛医大の近所)の病院に勤めていた人間がいる。彼がいた病院に「穴を掘るのが得意」という医師がいたそうだ。聞けばその医師は防衛医大の卒業生だった。

 詳しい方ならご存じかもしれないが、自衛官は訓練からたくさんの穴を掘る。塹壕(ざんごう)として、また野外でのトイレとしてなどだ。なお人が入れる穴を掘ることは、慣れていないと重労働であり、かなりの時間を必要とする。

 穴掘りをはじめ、防衛医大の学生たちは自衛官として心技体を鍛えていく。通常の医学を習得することと並行して、実銃を使い、空挺部隊で降下や催涙弾(催涙剤)を体験する。これはあくまで医師免許を持った自衛官の育成機関だからである。

 6年間の修学期間が終了し、医師国家試験に合格すると晴れて医官となる。最初は2年間、自衛隊関連病院での勤務が義務づけられており、その後部隊に配属となる。

 ちなみに卒業後9年以内に自衛隊を辞めると、最大で約5千万円という防衛医大卒業までの経費を支払わなくてはならない。

 無料で医師免許は取得できるかもしれない。ただ自衛隊の上下関係が持ち込まれる厳格な寮生活を過ごし、ただでさえ大変な医療の学習に加えて、自衛官としての訓練も待っている。おまけに9年間は好きな病院に勤めることができない。

 防衛医大はおそらく日本一ストイックでスーパーハードな学び舎なのである。

■目指すは究極の文武両道! 日本一ハードに学ぶ医者の卵たちの成長物語

物語は主人公の賢人が防衛医大の門をくぐるところから始まる。賢人は親子関係が少々ワケありで、叔父叔母の元で高校卒業を迎えた。

 独立心の強い賢人は自分だけの力で生きていこうと考えた。そこで最低限のコストで医師免許をとろうと考え、学費などが無料の防衛医大に入学を決めた。

 待っていたのは衝撃の出会い。同じ新入生の伊奈波ハナレは、父親である和人の再婚した妻だった。つまり同級生に継母がいる特殊な状況で、賢人の医学生としての生活はスタートする。

 防衛医大には他にも、さまざまな想いを持って入学してきた仲間たちがいる。自衛官の兄に憧れている美馬。父親への反発から入学してきた男鹿。震災で家族を失ったことを契機に医官を目指す久保出。強さを持った医師になりたい土居内。

 彼らは協力しあい、ときにはぶつかり、障害を乗り越えていく。これらがときにはシリアスに、ときにはコミカルに描かれる。

 能力は高いが尊大な意識と姿勢だった賢人は、防衛医大で過ごすうちに変わっていく。

■医療もの×学園もの×自衛隊ものという掛け算で起こる化学反応

『賢者の学び舎』というタイトルの賢者とは、作中で某ゲームの職業に例えられて以下のように語られている。

防衛医大の学生は、文武両道! 剣も使えて魔法も使える賢者みたいでカッコいい!

 賢人も仲間も皆、初々しかった1巻。月日は流れ最新刊4巻では、彼らは進級して2年生になり、ハードな訓練も医学習得も本格化する。さらに並行して、防衛医大伝統の対番(ひとりの新入生に先輩がついて面倒を見ること)を行う。賢人は担当した1年生に悩まされ、ペースを乱される…。賢者への道は果てしなく続くようである。

 本作は医療ものであり、知られざる防衛医大や自衛隊の訓練を知ることができる自衛隊ものだ。そしてもちろんキャラクターたちの成長も楽しめる学園ものでもある。3つのジャンルの掛け合わせで起こる化学反応を、ぜひ楽しんでみてほしい。

文=古林恭