活況帯びる「シニア婚活」の実態。60歳女性再婚希望、相手男性は3歳下の医師、成否を決めるポイントは?

恋愛・結婚

公開日:2019/10/29

『ルポ シニア婚活』(篠藤ゆり/幻冬舎)

「シニア婚活」と聞いて、あなたはどんなイメージが湧くだろう?

 あなたの年齢や立場にもよると思うが、「積極的でいいと思う」という良い印象を持つ人と、「いい歳をして恥ずかしい」というネガティブな印象を持つ人との両方といったところだろうか。

『ルポ シニア婚活』(篠藤ゆり/幻冬舎)は、60・70代以上の婚活について、結婚相談所の現状を中心に取材した1冊。20・30代の人にはどんな内容か想像つかないかもしれないが、筆者にとっては妙に心に引っ掛かる内容だった。自分とは関係のない世界のルポにもかかわらず、読後に「結婚の意味は? 幸せとは何だろう?」という思考に誘われるのだ。

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■シニア婚活の市場は活況? その理由は?

 さて、65歳以上で結婚する人の人数だが、2000年に7800人だったものが、2015年には1万4500人と、ほぼ倍に増えている。今のシニア層は婚活に前向きな人が多く、婚活へのイメージもオープンで明るいものになっている。シニア層の婚活は、Web上のマッチングサイトよりも、結婚相談所が主催する婚活パーティーやお花見などのイベント、またはプロがマッチングした候補を個別に紹介するスタイルが人気だという。相談所の担当者も、候補者のお相手に直接会って見極めたいという気持ちも強いようだ。

 まずは、実際の成功例を。

 加藤玲子さんは現在60歳。3年前に結婚相談所の懇親会で出会った男性と結婚した。玲子さんは再婚。男性は3歳下で初婚だ。

 玲子さんは初めの結婚が破綻し、ひとりで3人の男の子を育てあげた後、再婚を考えるようになった。親としての責任も果たしたし、息子たちも勧めてくれるし、ということで、新たなライフスタイルを求めて、相談所に登録し懇親会に参加してみた。すると、「ご飯をつくってほしい」という男性が多くがっかりしたそうだ。「私は家政婦ではないので、お互いの求めているものがちょっと違うなと感じました」という。

 現在の夫は医師で、学生時以来一人暮らしをしているので家事に困って結婚願望を持ったわけではない。実家の両親も鬼籍に入り親戚付き合いもほとんどない。時折無性に襲われる孤独感を和らげたいという思いからの懇親会参加だという。2人は、帰り道の方向が一緒だったから自然と話すように。順調な交際を経て、めでたく籍を入れた。

 2人の結婚生活は少し独特だ。例えば、寝室とプライベートルームは別。夫は、趣味の歴史研究はじめ自分だけの世界を持っているので、玲子さんはそこには絶対に介入しない。それでも、2人は共に生活をするのが楽しいという。夫がよく言う言葉「一緒になって本当によかった」に、玲子さんは照れつつも本当にうれしそう。余談だが、婚活中は嫌になっていた料理も、「おいしい、おいしい」と言ってくれるのでと、今では生きがいのひとつなのだとか。

■シニア婚活を成功させるカギは

 彼らが幸せな結婚ができたのは、運の良さだけではない。重要なのは、婚前に本人同士がしっかりと話し合うことだろう。

 まずは、お金の問題。自分の財産はお互いに隠さず公表し、玲子さんの息子たちと相続争いにならないよう公正証書を作っておく。さらに、生活費をどこから捻出するのかもはっきりさせておくこと。そして、どこで、いくら掛かるような生活をするのか、をなるべく具体的に示し合わせておくこと。また、2人の性生活の希望もすり合わせておくべきだという。

 どんな結婚生活を送りたいのかを話し合う…。本来なら、すべての世代の婚活や結婚がこうであるべきなのだろう。だが、若い年齢での結婚だと勢いで一緒になることもあるだろうし、自分の希望の生活スタイルなんてまだわからないという人もいる。残りの人生を考えた上で行われる、シニア婚ならではの成功の秘訣だろう。

 現在のシニア世代は、誰でも結婚することが当たり前だった世代。若手世代なら、シングルでいることは珍しくもなく、ひとりだと寂しいという思いもそう強くないかもしれない。生きているだけで精一杯で、結婚なんてまだまだ考えられないという人もいるだろう。また、結婚によって発生する責任、例えば家と家同士の付き合いや、相手が病気で介護が必要になったとき自分はどこまで面倒を見られるのだろうと考えると、結婚が面倒に思う人もいるだろう。

 良き人生に結婚は絶対必要か? 人によってそれぞれの答えがあるだろう。寂しさの埋め合わせに結婚は有効か? さて、あなたはどう考えるだろうか?

文=奥みんす