「脳にいい」電車の乗り方でビジネススキルを向上できるらしい

ビジネス

公開日:2019/11/11

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『脳にいい!通勤電車の乗り方 脳内科医がズバリ解説(交通新聞社新書)』(加藤俊徳/交通新聞社)

 毎日苦痛な通勤電車。満員電車に押し込まれ、それに耐えながら時間つぶしにスマホでマンガを見たり、ゲームをしたり。中には、ニュースサイトで仕事に役立つ情報収集をしたり、語学の勉強をしたりしている向上心が高い人もいるだろうが、この通勤時間がなくなれば、いかに毎日が快適になるだろう。実現しないことを考えてみても虚しくなるだけだ、という声が聞こえてきそうだ。

 そんな人たちに朗報だ。脳が活性化され、ビジネススキル向上や認知症予防に役立つ通勤電車の過ごし方があるらしい。その方法は、通勤電車でこそ取り組めるものなので、自己研鑽を図ったり、同僚に差をつけたりしたい人には渡りに船だ。

 方法を紹介する『脳にいい!通勤電車の乗り方 脳内科医がズバリ解説(交通新聞社新書)』(加藤俊徳/交通新聞社)は、電車が脳を活性化させる根拠として、電車内の異なる2つの性質を挙げる。1つ目は、電車が「パブリックスペース」であるという性質。不特定多数の人が、マナーを共有しながら場の秩序を保っている。2つ目は、パブリックスペースでありながらも、人の素の部分が出やすい「個人的な空間」になりやすい性質。時に、自宅にいるときと同じであろうリラックスした仕草や表情を見つけることができる。

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 このような不思議な空間だからこそ、脳を効果的に活性化させやすい。脳には1000億を超える神経細胞があり、同じような働きをしている細胞同士が集まり、集団を形作っている。本書は、これを8つの「脳番地」に区分けした。

(1)運動系脳番地
(2)記憶系脳番地
(3)感情系脳番地
(4)伝達系脳番地
(5)理解系脳番地
(6)視覚系脳番地
(7)聴覚系脳番地
(8)思考系脳番地

 本書によると、脳には人それぞれ個性があり、強い脳番地もあれば弱い脳番地もある。そして、弱い脳番地を伸ばそうとしてその脳番地だけを集中して使っても疲弊するばかりで思った効果はあげられない。ところで、脳番地同士は繋がっているという習性がある。そこで、他の脳番地を活用して繋がりを太くし、弱い脳番地を伸ばすと高い成果が得やすい。電車は、前述のような性質の空間であり、言い換えれば人種のるつぼである。場や席を詰めたり譲ったりするなどの中で、絶え間ない人間観察と行動が余儀なくされる。観察と行動が結び付くと、脳内では視覚系・聴覚系・理解系・思考系・運動系・感情系(さらに場合によっては伝達系も)の脳番地が使われている。脳がまんべんなく刺激を受けやすいのだ。つまり、弱い脳番地を伸ばす絶好の環境なのである。

 本書いわく、脳番地の中で最も重要なのは運動系脳番地。他の脳番地と必ず連携するのがココだからだ。しかし、運動系脳番地はスマホを眺めていただけでは活用されにくい。そこで本記事では、本書で掲載されている33ある「脳にいい電車の乗り方トレーニング」から、いくつかを簡単に紹介したい。

【トレーニング8】
人とぶつからないよう乗り降りする(30秒)
…肩や荷物も当たらないように乗り降りする。運動系脳番地、視覚系脳番地、思考系脳番地が特に活性化される。すし詰め状態の車内では、周りに配慮するだけで十分。感情系脳番地も活性化される。ビジネスでは、考え方の柔軟性を養うことができる。

【トレーニング11】
目を閉じて、片足で立つ(10〜30秒を3回程度)
…つり革につかまって行う。運動系脳番地が刺激され、さらに電車の前後左右の振動で右脳と左脳を同時に働かせる調整力が高まる。視覚系脳番地、思考系脳番地も活性化される。目を閉じると、バランス感覚が養え、集中力と脳の覚醒効果を高めることができる。

 この他、運動系脳番地こそ強く活性化はできないが、「乗客を著名人の誰かに当てはめる」「(黄色のものはどこにある? など)テーマを決めて車窓の景色を眺める」「車内アナウンスをリピートする」「広告の文字を逆さから読み、記憶する」など、電車通勤だからこそ取り組める脳の活性化方法が本書で紹介されている。

 本書は、通勤を変えることで仕事が変わり、生活が変わっていくという。現状を変えたい人は、身近な通勤から見直してみてはどうだろう。

文=ルートつつみ