漁師から球団常務取締役まで…「ドラフト最下位」からスタートした野球人生のその後

スポーツ・科学

2019/11/16

『ドラフト最下位』(村瀬秀信/KADOKAWA)

 2019年のNPBドラフト会議もドラマがあった。注目されていた佐々木朗希投手(大船渡高)はロッテ、奥川恭伸投手(星稜高)はヤクルトが抽選の末に交渉権を獲得。森下暢仁投手(明大)は広島が一本釣りで単独指名した。

 選手にとってはくじ引きで人生を左右されるという一大行事である。ただ、くじ引きであれば上位指名選手なのでプロ入りは決まっている。一方で、プロ入りの当落線上にいる選手たちは、自分の名前が呼ばれるか呼ばれないかによって、“くじ引き”以上に今後の人生は大きく違ったものになるのだ。

『ドラフト最下位』(村瀬秀信/KADOKAWA)は、ドラフト会議で最後に呼ばれた16人の男たちを追いかけたノンフィクションだ。“幕張の安打製造機”の異名を持ち、名球界入りを果たして今季限りで引退となったロッテ・福浦和也選手をはじめ、数々の運命を1冊で味わうことができる。

 福浦選手のように“ドラフト最下位”から這い上がり、チームの顔となった選手もいれば大木勝年のようにわずか4年で戦力外通告を受けるも、フロント入りし、球団常務取締役まで昇進した者もいる。入団拒否して社会人野球に情熱を傾けた高瀬逸夫のような者もいれば、早々に引退し、故郷で漁師をやっている清水清人のような者もいる。苦労の末に夢が破れた者もいれば、指導者など別の形で野球に携わる者もいるのである。

「努力をすれば夢は叶う」と言ったのは誰だろう。本書に登場する選手たちは、努力をしてもケガに泣いたり、チーム事情や球界の制度変更によって翻弄されたりする。逆に、指導者の一言によって開花する者もいる。皆、そのときの環境や運、タイミングで人生が動いているように感じる。

 ただ、“ドラフト最下位”の者たちに共通しているのは「なにくそ」という反骨心である。期待されて入団したドラフト上位組とは違い、“ドラフト最下位”組は結果を残さなければ即クビとなってしまう立場にある。境遇は人を変える。一度でも、逆境にさらされた人間は強いのだ。秋の夜長にそんな彼らの人生の一端を覗いてみてはどうだろう。

文=梶原だもの