「ラグビー」が俳句の季語って知ってた? 季語についての情報満載のうんちく事典

文芸・カルチャー

2019/11/17

『季語うんちく事典』(新海均:編/KADOKAWA)

 日本人は季節に敏感である。それは当然、文化にも表れてくるが、顕著なのは「俳句」であろう。俳句の中には基本的に「季語」というものが存在する。季語とはまさしく“季節を感じさせる言葉”のことだ。季語を含まない俳句も存在するが、やはり「五・七・五」の言葉の中で、いかに季語を入れ込んでいくかは、俳句を詠む醍醐味というべきだろう。『季語うんちく事典』(新海均:編/KADOKAWA)では、俳句でよく用いられる季語を季節ごとにセレクトして、その由来などを解説する。俳句はもちろんのこと、雑学や豆知識としてのおもしろさも味わえるのはうれしいところだ。

 俳句とは、季語を含んだ「五・七・五」の17字を基本とした「定型詩」のこと(季語を含まない無季俳句などの例外も存在する)。この短い字数の中で、季節感や自らの気持ちを詠んでいくのである。その中で季語は重要なファクターとなるのだが、ひとくちに季語といってもすぐに理解できるものから、聞いただけでは分かりづらいものまでさまざまだ。本書はそういった多彩な季語を、季節ごとにまとめて紹介する。その中から気になったものをピックアップしてみたい。

■春「山笑ふ」

 まず「山笑ふ」と聞いてすぐにこれが春の季語だと理解できるのは、詳しい人に限られるかもしれない。本書によれば、これは中国・北宋の禅宗 画家である郭熙(かくき)の『林泉高致』の一節が原典という。「春山淡冶にして笑ふがごとく」というのがそれで、「淡冶」とは「うっすらと艶めくさま」という意味。これは春山が芽吹きを迎えて明るくなった感じを表現したもので、このルーツを知ると、これほど春にふさわしい季語はないとさえ思えてくる。

■夏「水着」

 夏といえば海水浴だから、水着が夏の季語なのは容易に想像がつくはず。気になったのは本書で触れていた水着のひとつ「ビキニスタイル」の解説。このビキニスタイルを考案したのはフランスのデザイナーであるルイ・レアールだそう。彼は大胆なデザインを「あるもの」にたとえた。それはアメリカ軍がビキニ環礁で行った水爆実験だ。その“小ささ”や“破壊的威力”に共通性を見出し、小さい布地の水着が「ビキニ」と命名されたのだという。由来は衝撃的だが、さほど知られてはいないかもしれない。

■秋「朝顔」

 夏ごろに咲く花として知られている「朝顔」だが、季語としては秋に属する。なぜそうなのかといえば、日本を代表する歌人のひとり「山上憶良」の歌に「朝貌の花」という一節があり、その歌が「秋の七草」を詠んだものだったので、朝顔が秋の季語となったのだ。しかし、厳密には歌に詠まれた「朝貌」は、実は「桔梗」を指すらしい。桔梗は朝に花開いて夕方にはしぼんでしまうため、「あさがお」と呼ばれていたこともあったのだ。ちなみに入谷などで開催されて有名な「朝顔市」は夏の季語なので、少々ややこしい。

■冬「小春」

「春」という漢字は入っているが、「春」を指す言葉ではない。もともと小春は旧暦10月(現在の11月)の異称であり、季語としては冬ということになる。ちなみに立冬(11月7日ごろ)を過ぎたころに、春のような暖かい日があればそれを「小春日和」と呼ぶ。しかし1月や2月に暖かい日があったとしても「小春日和」とはいわないのは、この時期が小春ではないからということであり、なるほど、聞くと納得である。

 そういえば先般、日本はラグビーのワールドカップで盛り上がっていたが、実は「ラグビー」も季語であることをご存じだろうか? 季語は最近の言葉も多く取り入れており、そういう意味では俳句は決して「古典」ではなく、今でも誰もが楽しめる文芸なのである。そう、ラグビー観戦の熱い想いを「五・七・五」で表現すれば、それはもう立派な俳句なのだから──。

文=木谷誠