コカインやマリファナが飛び交う、闇の世界を描いた新感覚アウトローマンガ。裏社会の道具屋として生きる大学生の行方は

マンガ・アニメ

2019/12/3

『ハスリンボーイ』(草下シンヤ:原作、本田優貴:漫画/小学館)

 近年のスマートフォン普及によって、サイバー犯罪や児童買春などさまざまな被害が急増している。誰もが簡単に“一線”を越えてしまえる時代になっているのだ。『ハスリンボーイ』(草下シンヤ:原作、本田優貴:漫画/小学館)の主人公も、その一線を越えてしまった人間のひとりである。

 大学生の久保田タモツは自分に課された金銭的なハンデを解消するために、在学中の奨学金完済を目標に掲げていた。そのために彼が選んだアルバイトは、非合法(ハスリン)の道具屋。金さえ払ってもらえればどんなものでも用意する、裏社会のなんでも屋である。彼は「チャリンコ(コカインの隠語)」「ガーデニング(マリファナ栽培)」など、聞き慣れない言葉が飛び交う裏社会で日々危険と隣り合わせの生活を送っているのだ。

 ある日、タモツは半グレ組織「侘威蛾(タイガー)」のボス・アキヒロの誕生日を祝う会場での仕事を頼まれる。大きなキャバクラを貸し切って行われる数百万円規模の誕生日会は大盛況。会場にいる全員がアキヒロに気に入られるために必死に群がっていた。組織との繋がりが大きな仕事への足がかりになると確信したタモツも、意を決してアキヒロへの挨拶に向かう。とんでもないトラブルに巻き込まれるとも知らずに――。

 グラスの割れる音とともに飛び散ったのは、無数のガラス片とシャンパンに溶けたコカイン。じゃれ合ってきた男に押されて倒れたタモツは、アキヒロが用意した大量のコカインをすべて溶かしてしまったのだ。もちろん、悪いのはタモツではない。しかし、この裏社会では「あの人に押されたから、自分は悪くない」は通用しないのだ。タモツはアキヒロの“あたたかな心遣い”のおかげで、この失態をコカインシャンパンの一気飲みで許されることになった。

 上質なコカインの威力は1本で歯がガチガチに、3本で心臓が軋み、5本でぶっ倒れると言われるほど強力だ。ドラッグをしないタモツが仮に溶けたコカインをすべて吸引してしまうと命に関わることは容易に想像できる。はたして、タモツはどのようにして修羅場を切り抜けるのだろうか。

 本作は裏社会で生きるタモツの成長を描いたサバイバル物語。読み進めるほどに、胸がヒリヒリするほどの恐怖と自分の知らない世界への興味が掻き立てられる。裏社会での顔を持ちながらもどこか人間味溢れる主人公へのアンビバレントな感情は、良い意味で読者の心を乱してくれる。危険な世界を才覚で切り抜けるタモツの成長を通じて、現代社会の闇と裏社会の日常を堪能してみては?

文=山本杏奈