今後の消費の主役になる、親がリッチな子孫「親リッチ」の実像

社会

2019/12/2

『親リッチ(日経プレミアシリーズ)』(宮本弘之/日本経済新聞出版社)

 普通のサラリーマンのはずなのに、なぜかお金にかなりの余裕があって、周囲から浮いたリッチな生活をしている。身近にいるそんな人の親は資産家で、さまざまな援助を受けている可能性がある。資産家の財産は子孫へ受け継がれていく。親がリッチな子孫たちは、私たち庶民の考え及ばないところで何を考え、どんな悩みを抱えているのだろうか。

 著者が長年にわたりお金持ちを研究した成果をまとめた『親リッチ(日経プレミアシリーズ)』(宮本弘之/日本経済新聞出版社)は、親がリッチな子孫たちを「親リッチ」と呼ぶ。親リッチたちは、日本において今や隠れた消費の主役ともいえる存在になりつつあるという。

 本書によると、いつの時代、どんな国でも、お金持ち層の住人たちは、完全に固定化はされず、絶えず入れ替わりながら、社会のダイナミズムを維持してきた。お金持ちには2つの種類がある。ニューリッチとオールドリッチだ。ニューリッチは、昨今、存在感を増しているIT起業家などの新参リッチだ。対して、オールドリッチは代々の歴史をもつリッチであり、親リッチもここに含まれる。

 両者には共通項もあれば、大きな相違点もある。本書は、相違点…つまり価値観や行動特性の違いに着目し、社会でその実像が正確に知られていない親リッチのリアルに迫っている。ニューリッチは消費意欲が旺盛だったり、言動が派手だったりとまるで“太陽”のような存在感があり、メディアでもしばしば取り上げられる。対して、オールドリッチは総じて倹約家で、振る舞いも大人しく“月”のような存在だ。そのため、お金持ちを相手に商売をしているプライベートバンカーなどの専門家ですら、実像が把握できていなかったり、顧客にできていなかったりと、商機を逃がしているケースが少なくないらしい。先に述べたとおり、本書は今後の日本で、親リッチたちが消費の主役になっていくと考えている。親リッチの実像を知ることは、これからの商機を掴むことに繋がるのだ。

 富は子孫へ受け継がれることから、お金持ちは家族の繋がりを非常に大切に考えている。そこで、プライベートバンカーなどの専門家は、お金持ちの顧客、あるいは顧客候補に対して、ファミリーの結び付きを強める支援をしようと考える。例えば、家族内の考え方のギャップを埋めるために、家族間の本音の媒介役を買って出たり、タイミングと空気を読んで意思疎通をサポートするために奔走したりする。しかし、これにはかなり高度なセンスと技術が求められる。家族の誰かに肩入れしていると思われたら、その役割を果たすことができなくなるからだ。右から左へ情報を流すだけでは、「逆もある」と疑われてしまう。しかし、家族個々人の性格や考え方を熟知し、本人たちでさえ気付いていない家族共通の価値観や哲学を理解した有能な専門家は、みごと顧客の家族力を高め、信頼を勝ち取り、顧客から子孫…つまり親リッチを紹介してもらったり、親リッチの厚い信用を得たりできる。

 現に、いま日系の大手金融機関などでは、先のようなねらいのもと、プライベートバンカーが実質的に長期間にわたり同じ顧客を担当する例が増えているという。

 親リッチを理解することで、今後の日本経済がどのように動いていくのか、また商機はどこにあるのかが見えてきそうだ。

文=ルートつつみ