部下が自分より優秀で困っている…「あなたよりちょっと頭がいい、専門分野に詳しい部下」にバカにされずリードするコツ

ビジネス

公開日:2019/12/11

『アインシュタインズ・ボス 「天才部下」を率いて、最強チームをつくる10のルール』(ロバート・フロマス、クリストファー・フロマス:著、三輪美矢子:訳/TAC出版)

 将棋の藤井聡太、サッカーの久保建英など、このところ「若き天才」と呼ばれる人材の活躍が様々な分野で目を引く。「こんな若手が自分の部下だったら実に頼もしい」なんて思うだけなら気楽だが、本当にこういう「天才」の上司になったらなったで、どうやって率いていくべきか悩ましいことも多いはず。

 だが、そう空想する方の中には、「自分より明らかに優秀な人材」を部下に持っている方もいるのではないだろうか。実はそうした人材を率いる際にも、天才へのマネジメント術に学ぶところが多いようなのだ。

 このほど出版された『アインシュタインズ・ボス 「天才部下」を率いて、最強チームをつくる10のルール』(ロバート・フロマス、クリストファー・フロマス:著、三輪美矢子:訳/TAC出版)は、いわゆる天才的頭脳を持った優秀な人物を部下に持つリーダー(上司)が、部下の潜在能力を引き出すために取るべき行動をわかりやすくルール化したという一冊。少し特殊なケースのようだが、著者は「あなたよりちょっと頭がよかったり専門分野に詳しかったりする人々を率いるときにも、これらの戦略は使える」と断言している。

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 なおタイトルにアインシュタインとあるのは、ノーベル賞受賞者を数多く輩出し、アインシュタインも所属したプリンストン高等研究所の所長・フレクスナーの実践を多くヒントにしているためだ。

 果たして「優秀な人物」をリードするコツとは何か。本書の内容をいくつか紹介しよう。

●ルールその1 鏡と向き合う

 天才を率いるリーダーがまずすべきことは、「自分が天才でないこと、部下である天才がそれを知っていることを認めること」だ。往々にして上司というだけで上から目線になってしまいがちだが、そうした自尊心こそまずは封じ込めよう。そのためには徹底した自己評価を行い、その上で結果に基づいてダメな行動は修正できるようにしよう。

 ちなみに徹底した自己評価を自分で行うのはかなり難しいこと。そのため信頼できるアドバイザーに「鏡」の役目をしてもらうといい。まずは「ありのままの自分」を映し出してもらい、それをきちんと認識。プライドで行動することをやめるのがスタートラインだ。

●ルールその2 邪魔をしない

「天才の成功を阻む最大の原因になり得るもの」とは何か。それはリーダーの存在そのものだ。多くのリーダーは自分がプロジェクトの中心で采配を振るべきだと考えて干渉しすぎ、結果的に天才の創造性を押さえ込んでしまう。とにかく天才の邪魔をしないこと!

●ルールその3 黙って耳を傾ける

 上司という存在はつい部下に自分の話ばかりをしてしまいがちなもの。しかも相手が賢く飲み込みが早い場合、さらに加速してしまう危険がある。だが、それによって相手(天才)は口をつぐんでしまうかもしれない。彼らに能力を発揮してもらいたかったら、リーダーはひたすら聞き役に徹したほうが身のためだ。

 いかがだろうか。最初の3つ目までを紹介したが、いずれもリーダーに求められるのは、ある種の「謙虚さ」とも言い換えられそうだ。上司として関与する方向に行きがちなところを、むしろ逆に自分を抑えて相手を「自由」にすること。彼らの指導者ではなく理解者となることが、天才から真のパフォーマンスを得る道なのだ。

 ちなみに天才を「予測のつかない相手」と捉えるならば、世代間ギャップで理解しにくい部下、あるいは思春期をすぎて大人になりかけた子供の子育てなどもヒントになるかもしれない。いずれにしてもルールは全部で10。興味を持った方はこの先をぜひ本で確かめてみてほしい。

文=荒井理恵