上手なひとり暮らしには「秘訣」がある!? 幸せを満喫するコツ(と失敗談)を紹介

暮らし

2019/12/15

『ゆるり より道ひとり暮らし』(おづまりこ/文藝春秋)

 読者の皆さんは「ひとり暮らし」にどんなイメージを持っているだろう? 学生さんは、自由気ままな生活だと思っているかもしれない。また、現在ひとり暮らしだという人々にとっては「そんな甘いもんじゃねぇ!」と言いたくなるかも。小生も親元を離れて20年近く経ってしまったが、その実感は「まあ何とかなるもんだ」というところである。
 
『ゆるり より道ひとり暮らし』(おづまりこ/文藝春秋)は「おひとりさまエッセイ」が大人気の作者・おづまりこさんが自身の大学生時代から現在にいたるまでの「おひとりさま満喫ライフ」をオールカラーで綴るコミックエッセイ。そのゆるりとした暮らしぶりをみると、ひとり暮らしを大変そうだと躊躇している人も「これなら自分でもできそう!」と思ってしまうかもしれない。
 
 おづさんがひとり暮らしを始めたのは、京都の美大への進学がきっかけである。初めてのひとり暮らしだけに当初は夜中の物音に脅えたり、誰にも起こしてもらえないので朝起きるのにも苦労したりしたそう。しかし、それでも数カ月経ち生活に慣れてきた頃、坂の上にあるアパートへと帰り道を急ぎながらも、周囲を見る余裕が出てくる。そこで道を振り返り気づくのが、綺麗な夕焼けとそれに照らされる京都の街並み。おづさんはその景色が大のお気に入りになったそうだ。
 
 ふと小生自身も上京当時を思い出す。当時、東京都北区の十条商店街でアルバイトをしていたのだが、家路につくときに、東北本線をまたぐ環状七号線の陸橋から、地元では見慣れないJRの車両を眺めるのが楽しみだった。こんなことにちょっとした楽しみを見つけたときから、ひとり暮らしの余裕が生まれるのだろう。

 ひとり暮らしといえば、やはり自炊も欠かせないもの。おづさんは実家暮らしの頃にはほとんど料理をしたことがなく、カレー作りを手伝ったことがあるくらいだったので、初めての自炊メニューもカレーだった。だが、分量の加減がわからず、カレールゥを1箱丸々使ってしまい、8人前が一気に完成。1週間カレーを食べ続けることになったのだ…。

 おづさんは、材料を計画的に使うことが苦手だったそうで、冷蔵庫の中には使わないまま進化──要するに傷んで変質──してしまった肉や野菜などが残りがちだったという。もっとも、これはひとり暮らし初心者にはよくある話だろう。その経験と反省から計画性を身につけていけばいい。小生など長いひとり暮らしだけに、冷蔵庫の中は…やっぱり使い残しがあった…。

 おづさんは、大学を卒業後に漫画家を志し上京する。その際に派遣社員として働きながらシェアハウスに住むという選択をした。実家のある兵庫から、かなり離れた土地で女性のひとり暮らしというのは不安なことも多いだろう。ならば数人で過ごせるシェアハウスはよい選択だと思う。小生自身も、上京当時は友人宅のすぐ近所に部屋を借りていた。

 そして、数年後にはシェアハウスも解消し、おづさんは改めてひとり暮らしを再開する。これまでの経験を活かし、しっかりと計画的に生活を始めるのかと思いきや、あいかわらずのんびりとした暮らしぶりのようである。実は、その頃にマンガ家としてのデビューも決まったのだが、実にマイペースだ。でも、それこそがひとり暮らしの味わいなのだと思う。

 ファッション誌などでは、モデルさんが小綺麗な部屋で洒落たアーバンライフを送っているように演出された写真が掲載されており、そんな暮らしぶりに憧れる若い人も多いだろう。だが、実態はそんなお洒落なもんじゃない。部屋づくりの目標として参考にする分にはいいが、その状態を維持するには相当な努力が必要だ。それならば、いっそ開き直ってのんびりと自分のリズムで生活した方がきっと有意義だ。本書は、現在のマイペースなひとり暮らしに「ひょっとして自分は怠惰なのでは?」と感じている人にも、ぜひおすすめしたい1冊である。

文=犬山しんのすけ