遺書と遺言書の違いって? 相続・葬儀・お墓のことまで“とっつきにくい”終活がマンガでわかる解説書

暮らし

公開日:2019/12/27

『終活ねっと式 マンガでわかる「終活」』(終活ねっと:著、えんぴつ.:漫画/セブン&アイ出版)

 最近、「終活」を考える人が増え続けている。一方で、身辺の整理に始まり、遺言、葬儀、お墓の手配、相続、法要と、あまりに範囲が広く、専門家もバラバラ。いったい誰に何を聞いたらいいかわからない……と、途方に暮れる人が大勢いる。そんな時、間違いなく理解や準備の手助けになるのが、本書『終活ねっと式 マンガでわかる「終活」』(終活ねっと:著、えんぴつ.:漫画/セブン&アイ出版)である。

 高齢者や高齢の親を持つ人々を中心に関心の輪が広がりを見せる終活だが、関連サービスを担う企業も増えた。中でも、終活総合WEBサービス「終活ねっと」はアクセス数で業界No.1(ニールセン調べ)を誇るという。

 そんな終活ねっとが、より多くの方に正しい終活の知識を、わかりやすいマンガ形式で紹介するのがこの書籍。これまでに培ったノウハウを最大限に活かし、情報を集積した、まさに「終活の教科書」だ。

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■終活の定義と必要性

 そもそも「終活」とはなにか。終活ねっとのWEBサイトではこう定義している。「これからの自分の人生について考えたり、行動したりするすべての活動」。これがなぜ重要なのかは、「自分で自分の事を決定できないという状況に陥ったとき」に、こうしてほしいという希望や意志を考えておき、周囲に示しておく必要があるからだ。

 誰もが徐々に衰えて大往生できれば、周囲には多少なりとも考える時間が与えられる。だが多くはそうではない。突然「そう」なった時に、家族や大切な人たちに迷惑をかけたくないだろう。また何よりも「自分らしく終わりを迎えたい」と考え、終活に取り組む人が多いのではないか。

■マンガをまじえてライフエンディングを解説

 ただ、人生の終わりを考える人間にとって、まだまだ終活情報は不足している。数世代で一緒に暮らす人は昔よりも少なく、人の死の前後に何をしなくてはいけないのか、はっきりわかっている人は多くないだろう。

 そこで本書では多岐にわたる情報をわかりやすくまとめ、さらにマンガ形式にしたことで、登場人物の悩みを共有したり、その心情に共感しながら読み進めるうちに、相続や遺言などの難解な話がずっと身近なものに感じられるようになっている。

 章は6つ。ストーリー仕立てのマンガが章をまたいで展開し、その後にマンガの中で出てきたキーワードを詳細に解説している。

第1章:遺言書・エンディングノートの書き方

遺書と遺言書の違いをご存じだろうか? 実は書き方ひとつで法的な効力が大きく異なってくるという。さらに、遺族へのメッセージや連絡事項などをまとめる「エンディングノート」の書き方も詳しく解説。

第2章:死後の手続き

悲しみの中で遺族がする必要がある手続きをまとめている。解約手続きが必要なサービス、特にWEBから契約したものは近年トラブルになりがちだそう。死亡後すぐに、葬儀後に、それぞれ手続きが必要なことを紹介している。

第3章:財産相続

財産の相続についての知識は必須だろう。親族に面倒と争いが起きないよう考えておく必要がある。税理士、司法書士、行政書士、弁護士など専門家の区分もぜひ覚えておきたい。

第4章:葬儀

葬儀後、料金が不明瞭で高額だった、という感想が出ることが近年多いそうだ。それについて言及し、故人を偲ぶさまざまなかたちを紹介している。いわゆる仏式の中でもどんな葬儀があるのか、神式、キリスト教式といった他の宗派の葬儀まで理解できる。

第5章:法要

初七日や四十九日という言葉は聞いたことがあるかもしれない。故人と遺族を結ぶ重要な習慣を、なんのために、いつまで、と具体的に示している。

第6章:墓と仏壇

墓地の種類などを解説。最近話題になってきている「墓じまい」や「改葬」などもわかるようになっている。仏壇・仏具についても紹介。

■ポジティブに最後の時間をとらえるための指針に

 本書の言葉を借りれば、終活というと死を連想し、暗いイメージを抱く方も少なくないかもしれない。誰もが悲しみからは目を背けたいものだろう。ただ終わりを見据えることは、今をよりよく過ごすために必要だ。

 自分が残りの人生でしたいことを整理し、大切な誰かが満足いく最後の時を迎えられるように考えるのは、ポジティブな行動だ。その指針に本書を役立ててみてはいかがだろうか。

文=古林恭