Twitterでの“いいね”累計数350万以上! 気持ち悪いのにあったかい、おじさんとショタくんの物語

マンガ

公開日:2019/12/17

『ショタくんとおじさん』(tunral/スクウェア・エニックス)

 プロアマ問わずの個性的なマンガが自由気ままに掲載されるTwitter。ここから人気が出て書籍化されるケースも多く、その数は年々増えているように思う。そんな中でもひと際インパクトのある、“いいね”累計数350万を突破したマンガが単行本として発売された。その名も『ショタくんとおじさん』(tunral/スクウェア・エニックス)。

 このマンガは、タイトル通り幼さ全開の男の子「ショタくん」と、擬音がニチャニチャネチョネチョしている太った「おじさん」の2人を中心に物語が進んでいくのだが。最初は「フフ……おなかペコリーナだよね……おたべ」とおじさんがショタくんに何かが入った器を差し出し、ショタくんが(……白くてドロッとしてる……)と不審がりながら口にする。もう、冒頭から犯罪の香りしかしない。何これ気持ち悪い…。しかしこの「おじさんのだよお……」と差し出された器の中身は、実は「おじさんの育てた山芋をすりおろしたものに卵黄と醤油ときざみ海苔をまぶしたやつ」なのである。さらに中には刻んだ山芋もあり、歯ごたえの良さまでしっかり意識されている。美味しそう…!

 このあとも、青ざめ震えているショタくんに「おじさん入れてきたから……ネッ……」と白くてドロッとした液体を飲ませようとしたり、外出しているショタくんをストーカーしたりと、何かと不審な行動が続く。だがこれも、実はすべてショタくんを守り、応援するための行動なのだ。このように、気持ち悪さの滲み出るおじさんが犯罪行為を…かと思いきや実は! という流れになっている。

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 最初は不信感を露にするショタくんと不審な行為を繰り返すおじさんが描かれるばかりだが、後半になるにつれて展開の角度が少しずつ変わっていく。裏でおじさんがどれだけショタくんのことを見守り、立ちはだかる壁を取り去り、気遣いながら成長を応援しているのかにより焦点が当てられていく。また、ショタくんも少しずつおじさんの優しさに、自分が守られているということに気づいていく。そして一歩ずつ成長していく。

 このおじさんはいったい何者なのか、仕事はどうしたのか、そしてショタくんの家族はなぜいつもいないのか…と気になる点も多々あるが、この絶妙な距離感と関係は、読み進めていけばいくほど心がじんわりと温かくなる。おじさんはショタくんがハグなどを求めても自らショタくんに触れることはなく、必要以上に関係を詰めることもない。あくまで“陰で支える大人”のポジションを保とうとする。そのため後半では、心を開いたショタくんの行動におじさんが戸惑う場面も。こうなると、最初は気持ち悪く感じていたおじさんもなんだか可愛く見えてくるし、ショタくんのお守りをがんばって! と応援したくなってくる。

 現実でこの『ショタくんとおじさん』のおじさんのような行動をしていたら、子どもを見守る第三者に通報されてしまう気がするが…何かがあった時、おじさんのように子どもを危険や悲しみからサッと助けてあげられる人はかっこいい。こんな優しい世界で育ったら、その守られた子どもも優しい大人になるのだろうなと感じた。

文=きこなび(月乃雫)