世界をウラで牛耳ってきた地下組織の実態。中には国家が運営する組織も!?

社会

公開日:2019/12/26

『本当に恐ろしい地下組織』(歴史ミステリー研究会:編/彩図社)

 信じていない人も多いかもしれないが、この世界にはたくさんの「地下組織」が存在する。歴史的な事件の背後で暗躍し、世界を操る闇の勢力…といわれると、「そんなもの本当にあるの?」と訝る人も多いだろう。確かに、世に出回る“陰謀論”の中には信憑性の疑わしいものも多数見受けられる。しかし、かつては噂の域にとどまっていたが、現在ではその存在が公に認知されているような地下組織も多く存在するのだ。
 
『本当に恐ろしい地下組織』(歴史ミステリー研究会:編/彩図社)は、日本を含む世界中に実在する地下組織に関する情報をまとめた1冊だ。大昔から世界の巨大勢力に関与するとされてきた組織から、近年やっとその存在が発覚したものまで、私たちの生活の背後に潜む世界を少し覗いてみよう。

■素顔を見せないハッカー集団「アノニマス」

 2008年頃からその存在が注目されてきた「アノニマス」。アノニマスとは「名無し」の意味だ。奇妙なマスクを被ったハッカー集団、と聞くと映画やドラマなどで見聞きした記憶からピンとくる方も多いのではないだろうか。「地下組織=悪いことをする奴ら」という印象を抱く人は多いだろうが、アノニマスは「権力と闘い民衆を救う」という正義の一面も持ち合わせているという。

 2010~2011年にかけて、アラブ諸国では「アラブの春」と呼ばれる民主化の嵐が吹き荒れた。このときアノニマスはチュニジアやエジプトなどの政府に対してサイバー攻撃を仕掛け、さらには政府からネットの規制を受けていた現地の人が自由に情報を発信できるように仕向けたとされている。

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 こう聞くとアノニマスは勧善懲悪で正義の味方であるようにも思えるが、彼らの掲げる正義はしばしば暴走することでも有名だ。日本でも既にソニーや官公庁のホームページがサイバー攻撃を受けたという。弱者に救いの手を差し出すが、一方では自由のためと称して攻撃を行う。そんなアノニマスは、善悪が表裏一体の厄介な集団だと認識されているようだ。

■世界中の情報が筒抜けに?「NSA(アメリカ国家安全保障局)」

 地下組織の中には、国家が秘密裏に運営してきたものも多数存在する。アメリカ政府が60年以上にわたりその存在を伏せてきた地下組織「NSA(アメリカ国家安全保障局)」もそのひとつだ。元CIA職員のエドワード・スノーデン氏の告発により世界中から注目を集めることとなった、アメリカ国防総省に所属する諜報機関である。

 アメリカの諜報機関といえばCIA(中央情報局)を思い浮かべる人は多いだろう。しかし実際はCIAよりもNSAの方が大きく、その規模は各国の諜報機関の中でも最大級だという。CIAが人を使って諜報活動や秘密工作などを行う実動部隊なのに対し、NSAの任務は電子機器を利用して情報収集や分析、暗号解読などを行うことにある。

 NSAの何が問題視されたのかというと、ハイテク技術を駆使してさまざまな個人情報を秘密裏に盗み取ってきたことだ。エシュロンというシステムを使って世界規模での通信傍受を行っており、世界中の電話やメール、ネット、衛星通信など、あらゆる電子情報の傍受が可能であるとされている。

 スノーデン氏の暴露はさらに続き、2009年にロンドンで開かれたG20サミットでも、各国高官の電話やメールがNSAとイギリスの諜報機関によって密かに傍受されていたという。この告発はアメリカと友好関係にある国々にも波紋を広げた。そして我々の暮らす日本ももちろんNSAのターゲットになっているようだ。1995年に行われた日米自動車交渉では、橋本龍太郎通産相(当時)の電話がNSAによって傍受されており、交渉前から手の内は読まれていたのだという。しかも、青森県の三沢基地にはエシュロンの施設もあるとさえいわれており、私たちの身近な場所で通信傍受が行われている可能性も高いのだと本書は指摘する。

 本書にはほかにも数多くの地下組織の情報が並べられている。世界人口の削減を目指していると噂される「ローマクラブ」、黒人奴隷の逃亡を支援した「地下鉄道」、日本の天皇家を陰から守る「八咫烏(ヤタガラス)」、今なお続く「公安警察」と「オウム真理教」の攻防など、日本を含む世界中の地下組織の気になる情報が満載だ。

 表舞台にふだん出ない情報は、どれも読んでヒヤリと感じること請け合いだ。私たちが知らないウラの世界をちょっとだけ覗き見するような気持ちで、楽しみながらページを開いていただきたい。

文=K(稲)