不良漫画と少女漫画のハイブリット作品『GALS!』主人公・蘭がモテる3つの魅力

マンガ

公開日:2020/1/2

『GALS!』(藤井みほな/集英社)

 2019年11月1日、渋谷に新たなシンボルが誕生しました。その名も「渋谷スクランブルスクエア」。地上47階建てのビルで、高さはなんと229.7メートル。現在渋谷エリアで最も高い建物なんだとか。2027年には別棟も完成するそうで、渋谷の進化が止まりませんね。

 そんなカルチャーの中心地である渋谷は、これまで多くの映画やドラマ、漫画の舞台になってきました。そのなかの一つが、『GALS!』です。

 1998年から2002年まで『りぼん』で連載していた漫画で、この作品でギャルに目覚めたという現在アラサーの乙女も多いのではないでしょうか。

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 当時、『GALS!』にかなりハマっていたという女性は、こう振り返ります。

「小学校3年生くらいのとき、夢中で読んでいました。好きなキャラクターは美由ちゃん。普段はぶりっ子なのに、キレたら怖いところがカッコよかったです。美由ちゃんたちのファッションが毎回可愛くて、よく真似していました。小学生でハイビスカス柄のワンピやチューブトップを着ていたのは、完全に『GALS!』の影響です」(29歳・埼玉県出身)

「『GALS!』がきっかけで、渋谷にものすごい憧れを抱くようになりました。電車で2時間かけて渋谷109の初売りに行き、ギャル服を大量買いしていました。蘭と乙幡麗くんが結ばれなかったことに当時かなり驚いた記憶があります」(31歳・千葉県出身)

 そんな伝説的漫画が、無料で読めるマンガアプリ『マンガMee』で連載を再開させました。作者はもちろん、藤井みほな先生です。続編の舞台はなんと、2002年の渋谷。『りぼん』での連載終了直後から物語は始まります。

 カリスマコギャルだった蘭は、高校を卒業し、プー太郎に。渋谷署のギャル警官になることを目標に、9月の警察官採用試験に向けて準備中です。ファッションは厚底サンダルにルーズソックス、髪型も金髪に赤メッシュと相変わらずド派手な蘭ですが、そんなに時代を感じさせません。

 親友の山咲美由は蘭の兄である大和と結婚し、短大に進学。同じく親友の星野綾は恋人の乙幡麗と同じ国立大学に進学。別々の道に進んだ3人ですが、集まるのはやっぱり渋谷。続編では、“コギャル”から“ギャル”になった蘭たちの恋や友情が描かれます。

 さて、『GALS!』といったら、やはり寿蘭ですよね。渋谷のカリスマコギャルである蘭は、みんなの憧れの的。蘭の魅力はなんといってもその生き方、考え方です。

●強い正義感

 警察一家に生まれた蘭は、幼少期から警察官になるよう言われて育ちます。そのせいか、ものすごく強い正義感を持っています。嘘や裏切り、曲がったことが大嫌い。普段はふざけていますが、ここぞというときは、どんな相手にもひるむことなくぶつかっていきます。間違っていると思ったら、たとえ学校の先生だろうと向かっていきます。先生に殴られて、殴り返す蘭は、カッコよかったです。

●恋より友情 誰より友達思い

 親友・綾の彼氏である乙幡麗が、蘭に気持ちが傾く…というシーンがあります。少女漫画おなじみの三角関係ですね。多くの作品では、ここからすれ違いや行き違いが生まれますが、蘭は違います。すぐさま綾と麗に会いに行き、直接話をするのです。妙な駆け引きや、勘違いは絶対にしません。そして、友達の恋を誰よりも応援します。信頼できる女の子なのです。

●“今を生きる”を地で行く

 最終巻で、蘭が珍しく真面目な顔で麗に言います。

「あたしは未来の自分より今の自分が大切なんだ」
「明日は明日でなんか楽しいことが待ってるって思ってるし、将来だって自分で決めたい」
「なにがイチバンてさ 今ココが自由で楽しくて平和なことじゃん?」

 刹那的に生きているように見える蘭ですが、絶対にブレない自分だけの哲学を持っているのです。大人になった今、このセリフを読むと、蘭という人間の魅力がよりわかるような気がします。

 誰よりも強く、誰にも媚びず、自分の道を突き進む蘭は、なんというかもう、少女漫画のヒロインじゃないんですよね。どちらかというと、少年漫画の主人公です。ルフィです。蘭一人を主人公にすると、読者の女の子たちが共感できないので、サイドに美由と綾がいるのだと思います。

 読者たちの多くは、美由と綾を自分に置き換えて、同じように蘭から勇気をもらっていたのではないでしょうか。

 今や蘭よりもずっと年上になってしまったけど、蘭は変わらず私たちを元気にさせてくれます。蘭がどんな大人の女性になっていくのか、続編で見ることができたら嬉しいですね。

文=中村未来(清談社)