水野美紀さんの言葉のパワーに圧倒される“余力ゼロ”の子育て奮闘記

出産・子育て

2020/1/12

(写真提供/朝日新聞出版)

 名もなき家事という言葉があるように、名もなき子育てミッションもそれこそ無数に存在する。43歳で第1子を出産した水野美紀さんによる『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』(水野美紀/朝日新聞出版)を読むと、その壮絶さがものすごいリアリティをもって迫ってくる。

『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』(水野美紀/朝日新聞出版)

 本書は現在も連載中の「AERA dot.」の人気エッセイを単行本化したもので、俳優でイラストレーターであるご主人の唐橋充さんがイラストを担当。出産・子育てで住む場所や生活のリズム、交友関係から価値観までまるっと激変した水野さんの言う “高齢新米ママの満身創痍な日々”が赤裸々すぎるほどリアルに綴られている。「エッセイを読んだ妻が号泣した」「ぜひうちの夫にも読ませたい」などの反響を呼んでいる話題作だ。

 その単行本刊行を記念したトークショーとサイン会(昨年のいい夫婦の日に開催)には200名もの読者が参加。子連れ歓迎のイベントのためかときおり赤ちゃんの声が会場に響く中、「こんにちは。お子さんがぐずったらトイレでもなんでもご遠慮なく、お子さんケアを優先していただければと思います」との水野さんの挨拶でトークショーは和やかにスタートした。

トークショーの模様

「人生で一度の貴重な子育て体験を記録に残したかった」というエッセイ執筆のきっかけに始まって、「子どもが生まれてから日々余力を残さず、気絶するように寝ています」という、本書のタイトル提案は自身の体験からだったエピソードなどを披露。

 子育て最初の3か月は数時間きざみの睡眠でふらふらになるため、「仕事を再開して移動でマネージャーの車に乗ったときにびっくりしたんですよ。こんなに静かな時間って久しぶり。移動するだけで何もしなくていいんですか? この時間!」と、ただの移動時間が贅沢に感じられた話には会場のママたちも共感しきり。

あと10年以上は続く“余力ゼロのママの道”を乗り越えるには…

夫・唐橋充さんの写真パネルを掲げる水野美紀さん
(写真提供/朝日新聞出版)

 イベント後半は水野さんのリクエストによる“会場との対話スタイル”で進められ、夫に対するグチや夫の子育ての悩みで盛り上がるひと幕も。

“うちの夫は34歳。なのに服を脱いだらポイっとそのままなんです”という声には「その年齢から生活習慣を変えてもらうって難しいですよね。うちの旦那もポイしたもののことをすぐ忘れてます。2歳4か月のうちの子と同じなんですよ(笑)」とねぎらいながら笑いをまく。

“夫が子どもを送ってくれるのはいいのですが、必要な持ち物を忘れるのでいつも保育園で借りるはめに…”というお悩みには、子煩悩でイクメンである夫に感謝しつつも「パパは反面教師。うちも子どもに“パパは散らかしマンだからまねしちゃだめだ”と教育していこうと思ってます」と回答。ドラマで見せるテンション高い怪演とは異なるふんわり穏やかな語り口で会場を盛り上げていく。

 連載で最も反響が大きかったのは「働くママよりも専業ママのほうが大変」であることを訴えたエッセイだ。子育ては24時間。専業ママにはひとりで命を預かる重圧がある。

「一般的には、子育てしながら働くほうが子育てプラス仕事になるから大変だろうというイメージがありますよね。でも、自分が撮影現場に行って仕事だけに集中させてもらっている間は夫か母が代わりに見てくれているわけで、その時間は息も抜けます。家の中でひとりきりで子どもから目を離さずにずっと見ているほうが絶対大変。子育ては終わりのないものだから、息抜きもしながらいっぱい人の手を借りるべきだと思います」と自身の体感を語った。

「ママの道はまだ長いですよね。あと10年以上は余力ゼロの日々が続くと思います。今後も、こうしたお子さんと一緒に参加できるイベントをどんどん展開していきたいです。一緒に子育てや孫育てを頑張っていきましょう」

 90分のトークショーを締めくくった後は、自ら客席の中を通って退出。お母さんに連れられてきた小さなお子さんを見つけて、かがみこんで笑顔で言葉をかけていた水野さんが印象的だった。

取材・文=タニハタ マユミ