変化を続ける東京の“ダークサイド”事件現場や元売春街に迫る『東京裏23区』

社会

公開日:2020/1/17

『東京裏23区』(本橋信宏/大洋図書)

 片田舎で育った筆者にとって、テレビドラマに映る“東京”は高いビルが立ち並ぶ、きらびやかな街だった。当時は「東京全域がドラマのような世界なんだろう。住むだけでかっこいい大人になれるはず」などと、極端な妄想をしていたように思う。

 実際に東京に住んでみると、きらびやかな場所はほんのごく一部で、自分を含めて街行く人々の顔はたいてい疲れた顔をしている、そんな印象だ。なかにはドラマのような生活を送っている人もいるかもしれないが、少なくとも貧乏ライターの筆者にとっては遠い世界。私のように、東京に対する夢や希望を失った人におすすめなのが『東京裏23区』(大洋図書)だ。

 著者は街のダークな歴史をひもとく「アンダーグランド」シリーズを手がけるノンフィクション作家・本橋信宏氏。最新作『東京裏23区』は、著者が自ら東京を巡り、街が抱える“闇”に焦点を当てた一冊だ。

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 同書に登場するのは過去話題になった事件現場や元売春街など、ガイドブックに載るはずもない裏スポットばかり。本橋氏は発生から20年が経とうとしている「世田谷一家殺害事件」の現場にも足を向け、いまだ逮捕されていない「犯人」について考察する。

私も現場を何度も訪れているが、少なくとも犯人はこの付近の土地勘があった人間だろう。現場を訪ねるたびに私は物盗り説に傾いていく。もっとお金がありそうな大豪邸を狙うはずだ、という意見もあるが、カネがありそうな家を狙うのではなく、侵入しやすい家を狙うのが物盗り犯の心理である

 被害者宅には今もブルーシートがかけられ、設置された簡易交番ボックスの中にひとりの警察官が駐在していたという。同事件は2000年の12月30日に発生し、一家4人全員が殺された凄惨な事件として注目を集めた。

 時の流れとともに事件の記憶は薄れつつあるが、実際に現場に足を運ぶと、本橋氏のように謎多き犯人について思考を巡らせてしまうのかもしれない。そのほかにも、1997年の東電OL殺人事件や2016年の碑文谷公園バラバラ殺人事件など、新旧入り交じるさまざまな事件現場を訪れ、現在の様子を綴っている。

 各地の殺人現場を渡り歩くだけでなく、練馬区にある23区唯一の牧場・小泉牧場でアイスを買ったり、秋葉原にある名物耳かき店で初の耳かき体験をしたりと、のどか(?)な一幕も。過去に起きた事件現場の現状とともに、その地域に住む人々の日常も描かれているのが同書の特徴でもある。この構成からは“事件や死は平和な日常のすぐそばにある”という一貫したテーマがうかがえる。

『東京裏23区』を読み、人々が忘れてしまった東京の裏の顔にもう一度触れてみるのも一興だろう。

文=とみたまゆり