処女のままAV女優としてデビューした戸田真琴が綴る、SNS社会における「孤独」の大切さ

エンタメ

2020/1/23

『あなたの孤独は美しい』(戸田真琴/竹書房)

 SNSの発展により、誰もが「何者か」になるチャンスに恵まれる時代になった。それはとても夢のある話だ。しかし、その一方で、「何者かになること」に振り回されている人も目立つ。いや、それは他人事ではない。ぼく自身もそうだ。「いいね」の数やフォロワー数ばかりを気にして、自分よりも発言力のある人を見つけては落ち込み、どうすればもっと目立てるのだろうと思い悩む。SNSに存在する自分は、自分自身の「断片」でしかない。それなのに、なぜかそこでの評価を絶対としてしまい、思うような結果が得られないと、自分自身に「ダメな奴」「必要とされていない人間」というレッテルを貼ってしまうのだ。

 2019年2月、そんなSNS社会を憂うひとつの投稿が話題になった。AV女優として活躍する戸田真琴さんがnoteに書いた「SNSで死なないで」というエントリだ。

 そこには、「何者か」になろうとして悪目立ちをする若者たちへの、戸田さんなりのメッセージが綴られていた。

“フォロワーぜんぜんいなくても、友達ぜんぜんいなくても、町中でだれもあなたのことを知らなくても、いいねが一個もつかなくても、そんなことは、どうでもいい。”

 この言葉に救われた人は少なくないだろう。ぼくも、心が軽くなる気がした。同時に、なぜ戸田さんはこうもはっきりと断言できるのか知りたくなった。

 そんな疑問を解消してくれるのが、彼女の初エッセイ『あなたの孤独は美しい』(竹書房)だ。

 本書は戸田さんの幼少期の体験からはじまり、処女のままAV女優になった経緯やSNSを通して見えてきた現代の闇、さらに誰もが「何者か」になろうと生きる社会とどう対峙していくかが等身大の言葉で綴られている。そして、根底にあるのが、「孤独を肯定すること」だ。

 ただし、ここで立ち止まる人もいるだろう。「いやいや、そもそもAV女優として成功している戸田真琴に、孤独な人の気持ちがわかるの?」と。

 しかし、そのように訝しむ気持ちは、本書をめくれば消えていく。

 幼少期の戸田さんは、とても複雑な家庭環境で育った。新興宗教を信じる家に生まれ、婚前交渉を厳しく禁じられ、家族間では諍いが絶えない。やがて母親の言葉が「呪い」のように染み付き、父親とは不仲になり、姉はいじめの末に引きこもってしまう……。そんな環境で育った戸田さんにとって、「周囲と自分が違うこと」はふつうのことであり、幼い頃から孤独と隣り合わせに生きてきたことは想像に難くない。

 だからこそ、戸田さんは何度も繰り返し、孤独を肯定する。

“私は、孤独が好きです。むしろ、孤独が悪いものだということを誰が決めたんだろう、といつも思っているくらいです。”

 そして本書は、こう締めくくられる。

“自分の幸福も不幸も誰のせいにもしない、自分の喜びや悲しみにちゃんと責任を持つ、自分という唯一の孤独な生き物をいつでもきちんと見つめているたったひとりのストーリーテラーとして生きていくのなら、そんなあなたのことを心から愛する人なんていくらでもいるからです。その「いくらでも」のうちには、もちろん私も含まれています。”

 孤独を肯定するということは、「誰からも愛されず、ひとりぼっちで生きていけ」という意味ではない。そうではなく、SNSで得られるお手軽な承認や愛情(のように見えるもの)に振り回されず、確固たる自分自身を持つことで、本当に愛してくれる人と生きていこう、という意味なのだ。

 この戸田さんのメッセージは、いまを生きる若者たちにこそ読んでもらいたい。人と人との繋がりが簡単かつ希薄なものになっている現代に悩んでいるのならば、そんな迷路から脱出するためのヒントがたくさん詰まっているはずだ。

文=五十嵐 大