「江戸城天守再建」は夢物語か!? 再建事業に情熱を懸ける熱き男の物語

マンガ・アニメ

2020/1/23

『江戸城再建 (1)』(黒川清作:著、三浦正幸:監修/小学館)

 年が明け、いよいよ2020年の始まりである。本年は東京オリンピックが開催されるため、訪日外国人の東京来訪も、これまで以上に増加するだろう。もちろん東京には東京スカイツリーなどのメジャーな観光場所が多く存在するが、いわゆる「東京ならでは」の場所となるとどうか。例えば熊本には熊本城があり、2016年の熊本地震で城がダメージを受けた際には、地元を挙げて復旧の音頭が取られた。こういった「歴史的モニュメント」が東京にも必要ではないのか。そのような観点で描かれる漫画が『江戸城再建 (1)』(黒川清作:著、三浦正幸:監修/小学館)だ。

 本作の主人公は、不動産開発業者──いわゆるディベロッパーの堀川昇吾。彼は自身が勤める会社・天王リーディングの企画会議において、「江戸城天守再建」の企画を提案する。あまりに現実味の薄い提案に対し、居並ぶ役員たちからは否定的な意見が多く飛ぶ。まずかつて江戸城があった場所が、現在の皇居東御苑内であること。さらに建築基準法や天守再建に対する国民世論など、問題となりそうな案件は枚挙に暇がない。しかし堀川は役員たちの疑問に、ひとつひとつ論証を重ねていく。文化的な意義や経済効果など、どれも一理あるものばかりである。しかし堀川の発案の根底にあるもの、それは「城が好き」ということだ。彼は熊本出身であり、熊本城の被災で心を痛めたひとりであったそして、すぐさま再建への行動を起こした熊本の人々を見て、多くの人が熊本城に愛着を持っていることを知ったのである。そういう存在が東京にも必要ではないか──それが堀川の考えであった。

 堀川は会社の役員たちを説得し、企画はプロジェクトとして正式に始動する。彼が最初に向かったのは、皇居を管轄する「宮内庁」であった。宮内庁は経済効果といったビジネス的要素ではなく、あくまで皇室の静謐やモラルに重きを置いた特殊な機関。彼らを説得できなければ、プロジェクトの成功は望めない。堀川は自らの信念をもって、宮内庁の幹部たちと面談する。会社の役員たちと同じように、先方からの疑問に丁寧に対応していく堀川。その中で「武家社会の象徴ともいえる天守が、今の時代に本当に必要か」という疑問に対し、堀川は再建を想定している「寛永度天守」は戦乱の世を想定していなかったことを説明し、現代において「城」は太平の世の象徴となっていると力説。彼の熱意に心を動かされた宮内庁の面々は、このプロジェクトに一定の評価を与えるのであった。

 宮内庁の他にも、堀川の前には文化庁や内閣府など、説得すべき相手が控えている。しかし彼のやることは変わらない。相手の疑問に対し確固たる論証を提示し、あとは自らの情熱をぶつけていくだけなのだ。実はこの「江戸城天守再建」案は、実際にNPO法人「江戸城天守を再建する会」として存在する。熊本城や首里城を見れば、城がいかに地域の人々に愛されているかが理解できよう。もしそのような象徴的モニュメントが東京に存在したら──。堀川と同じように「その姿を見てみたい」と願うのは、私だけではないと思えるのである。

文=木谷誠