ユニークな企画を立てたい人は必見。モノがあふれる時代に光る存在を生み出す“編集力”のヒント

ビジネス

2020/1/28

『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』(佐々木紀彦/ニューズピックス)

 生き方や働き方に“多様性”が求められる現代。従来のような上意下達、年功序列といった価値観や働き方はもはや崩壊したと指摘する声もたびたび聞かれるし、社会構造の変化に合わせて、私たちも少なからず意識を切り替えていくべきなのかもしれない。
 
 では、これからの時代はどのような考え方が求められるのか。そのヒントを提案してくれるのが、経済メディア「NewsPicks」の初代編集長・佐々木紀彦さんが著した『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』(ニューズピックス)だ。本書は、閉塞感のただよう日本に「編集思考」が必要だと強く訴えかける。

■“かけ合わせる思考”が求められる時代に

「編集」とは、メディアの中で働く間だけに求められるものではない。佐々木さんは編集の定義を「素材の選び方、つなげ方、届け方を変えることによって価値を高める手法」としているが、これは私たちの身近にあるさまざまな商品やサービスにも活かされている。

 例えば、今では生活に欠かせなくなったスマートフォンも「電話×パソコン×ネット」というかけ合わせで生まれた製品。人気のフリマアプリも、その土台には「モノ×シェア×スマホ」というかけ合わせがある。世の中を見渡してみると、いくつものジャンルを横串で刺したような商品やサービスが、いかに今支持されているかが分かる。

 そして、本書で核となるのは、この考え方がさらには「自分らしいキャリアや人生を創り上げるための頼もしい味方」になるということ。終身雇用制の崩壊など、これまでの価値観が変化していく現代では、「自分に合った仕事や人生を各々がカスタマイズしていかなければなりません」と著者は主張する。編集思考こそがこれからの時代には求められているのだ。

■編集思考のステップは「選ぶ・つなげる・届ける・深める」


 本書では、編集思考の工程を4つのステップに分けて解説している。一つひとつをかいつまんで紹介していきたい。

【1】セレクト:選ぶ
 編集思考の出発点となるのは、かけ合わせるべき素材をみきわめるために物事を自分なりに「選ぶ」というステップ。ジャンルは、ヒトやモノ、文化や場所などさまざまではあるが、肝心なのはそれぞれの「いいところ」に目を向けること。そして、その直感が正しいかどうかを、人との会話などもたよりに精査していこう。

【2】コネクト:つなげる
 次にやるべきは「つなげる」という段階。どんなにいい素材を見つけたとしても、調理方法を誤ってしまうとよさは引き出せない。例えば、古いものを現代へとつなげて新しい価値を見出すのもひとつの選択肢。近年注目されている「中古のリノベーション物件」などは、これに当てはまる。

【3】プロモート:届ける
 さて、ここからは外へ向けて発信していく段階。情報やモノがあふれる現代ではどのようにして「届ける」かも重要な課題であり、本書が提案するのは「3つのT」を意識するということ。時間軸を示す「Timeline」と、背景に根付く思想を表す「Thought」に加えて、SNSなどで評価される時代ではありのままの姿勢、真実を意味する「Truth」を伝えようと努めるのも必須だという。

【4】エンゲージ:深める
 編集思考の到達点となるのが「深める」という段階だ。エンゲージには「関与する、関係を深めていく」といった意味があるが、いうなれば、届けるだけではなくその先でどれほど長く付き合える関係性を築けるかということ。相手との適度な距離感を保ちながら、コミュニティを構築していくのが理想形のひとつだ。

「時代をつかむ」というのは、ともすれば雲をつかむような漠然とした話にもなりやすい。しかし、今の日本社会をみると、人々が求めるものや私たちの環境は、過去と比べて明らかに変わったと実感する。これからの新しい時代を作り上げる人たちにとって、本書が示す“編集思考”は必ずや生きるためのヒントになるはずだ。

文=カネコシュウヘイ