橋本環奈主演『シグナル100』の前日譚! 男は全員“性欲ゾンビ”『去勢転生』――宮月新原作漫画おすすめ2冊

マンガ

公開日:2020/2/5

■『シグナル100』の前日譚、“零巻”

『シグナル100 零』(宮月新:原作、Ryuki:作画/白泉社)

 先日公開された映画『シグナル100』。橋本環奈さん主演のデスゲーム系映画として反響を呼んでいる。この映画で大きな鍵となるトリックは、「後催眠」「自殺合図」というもの。

 生徒たちは担任教師から一度催眠にかけられるのだが、催眠中に仕込まれた暗示を忘れさせられている。「ここで起きたことを部外者に伝える」「暴力をふるう」など、あらかじめ仕込まれた「禁止行動(シグナル)」を取ってしまうと催眠状態に引き戻され、暗示によって自ら命を絶ってしまう。

 この「自殺合図」こそが『シグナル100』のデスゲームとしての面白さの醍醐味であるのだが、そもそもなぜそんな仕掛けが誕生したのだろうか。その秘密が明かされるのが、『シグナル100 零』(宮月新:原作、Ryuki:作画/白泉社)だ。映画の公開と同時に発売された“零巻”は、原作の前日譚だ。

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 主人公の霜月春哉は、行方不明になった兄・秋成を探すべく、同じ大学に入学する。失踪した兄と同じ第三学生寮に入居することになった春哉。そこの美人寮母・峰岸ゆゆは、兄の恋人だ。

 優しくて美しい寮母と、愉快な学生仲間たち。傍から見るとそんな微笑ましい寮生活だが、入居後まもなく春哉は異変に気づくことになる。寮母のゆゆに対し、学生たちは異様なほど怯えているのだ。彼らは皆「シグナル10」という催眠にかけられており、10の禁止行為のうちひとつでも実行してしまうと、自ら命を絶つ運命にある。

 なぜ「シグナル10」が誕生し、ゆゆがこのデスゲームのチェアマン的存在になってしまったのか。それには失踪した兄・秋成が深く関わっていることが物語の進行とともに明らかになる。そして、閉鎖された学生寮の中で繰り広げられるデスゲームは、「シグナル100」の誕生へと繋がっていく。映画を観る前に読んでおくと、「シグナル」の真髄が理解でき、その面白さも倍増することだろう。

■男は全員“性欲ゾンビ” ?!『去勢転生』

『去勢転生1』(宮月新:原作、おちゃう:作画/白泉社)

 同じ作者の作品としてお勧めしたいのが『去勢転生1』(宮月新:原作、おちゃう:作画/白泉社)だ。異世界に転生したら、男は自分ひとり。そう聞くと、男の妄想全開のハーレムものだと思われるかもしれない。しかし、本書で描かれる転生先の世界はディストピアに他ならない。

 主人公の姉崎悟は、思い人の一ノ瀬由奈を強姦殺人で失う。復讐の鬼と化した悟は、15人の性犯罪者たちを、性器を切断した末に殺害し、死刑となる。絞首台の足元が開き、「これでやっと由奈のもとへ行ける…」そう思った矢先、悟は並行世界へと転生していた。

 太陽が予想を遥かに上回る「メガフレア」を発し、その衝撃波が太陽風となって地球に到達。さらにフレアの強力な電磁波が、世界中の男たちの脳を破壊したのだ。凶悪化した男たちは、ただ目の前の女をレイプし、殺し、食料にするだけの「ケダモノ」となってしまった。つまり、この世界に転生してきた悟は、「女だけの世界で唯一の“まともな男”」として生きていくことになる。

 元の世界では男の身勝手な性欲を憎み、穢れた世界から消え去ることを望んでいた悟。そんな彼だが、転生先のディストピアの中で大きな希望を見つける。この世界では、由奈が生きている可能性があるのだ。

 由奈を見つけるために旅に出る悟だが、彼の周りに様々な思惑を持った女が寄ってくる。悟と共に異世界にワープすることを望む者、地上に唯一残された悟の貴重な精子を欲する者…。異様な世界で命の危機に立たされた女たちに振り回されながら、最愛の由奈を探す旅に出た悟の今後が気になって仕方がない。

 上述の2作品はそれぞれデスゲームと異世界転生物語というジャンルに分類できるが、どちらも「深い絶望」というテーマが共通しているように感じた。描かれる絶望が濃い分、そこに差し込む一縷の希望や、登場人物の勇気に胸を強く打たれる。映画『シグナル100』の公開に合わせて、宮月新原作漫画の世界も楽しんでみてはいかがだろうか。

文=K(稲)