宏嵩の成海に対する想いが文字となって爆発!? 大人気コミックス『ヲタクに恋は難しい』が小説版に

文芸・カルチャー

2020/2/14

『ヲタクに恋は難しい 小説版』(華路いづる:著、ふじた:原作・イラスト・監修/一迅社)

“社会人でヲタク”のカップルの恋愛模様を描いたラブコメ漫画『ヲタクに恋は難しい』。もともと人気作であったが、最近では実写映画も公開されてさらに話題を呼んでいる。原作が様々な形でメディア展開していくことは、ファンにとっては嬉しさ半分心配半分、というところ。原作の良さをちゃんと理解した人が作ってくれるのだろうか、キャラクターが崩壊してしまわないだろうか、その作品が好きであれば好きであるほど、心穏やかでいられないのがヲタクのさだめかもしれない。

 そういう意味では、小説版『ヲタクに恋は難しい』(一迅社)はファンを安堵させるだけではなく、大変歓喜させる素晴らしい仕上がりの作品と言えるだろう。

 著者は華路いづる。なんと、もともと作品のファンであり、pixivでヲタ恋の二次創作を3年半投稿し続けていたという猛者である。ノベライズの話が出たときに、原作者のふじたさんが書いてほしい作家として華路さんを推薦。そしてなんと豪華なことに、表紙と挿絵はふじた先生の描きおろし。ヲタクの恋愛を描いた物語が、そのヲタクによって小説化されるという、あまりに美しい経緯である。

 原作者がキャラクターをとても大事に丁寧に描いていたと評する通り、この作品で描かれる各キャラクターは台詞や動作ひとつとっても鮮明に頭に情景が思い浮かぶほどに、よく理解されていることがわかる。基本的に一人称で描かれるのだが、そのキャラクターの選ぶ言葉のひとつひとつが「ああ、そうそう、このキャラクターは内心でこういうこと言ってそう」とうなずくようなものばかり。

 特に、最初は宏嵩の成海に対する心境の変化や、ふたりが付き合うまで、そして付き合った直後などがオリジナルストーリーとして描かれるのだが、漫画ではあれほど言葉少なで表情も動きにくい宏嵩の内心が、成海への恋心で揺れたり乱高下したりするのが面白い。こうやってひとりの心の内をつぶさに見ることができるのが小説のいいところだが、まさにこの小説版はそれをやってくれたのだ。そして、心の中ではかなり饒舌な宏嵩の語りが、全く違和感がなく、むしろ宏嵩らしさ満載なのは著者の作品愛によるものだろう。

 宏嵩や成海、樺倉、花子、光、尚哉など、原作でおなじみのメンバーの、漫画では描かれない日常ストーリーはもちろん、反物問屋「二藤屋」を舞台に巷を騒がす盗難事件を描いた物語や、成海がメイドで宏嵩がご主人様の妄想炸裂ストーリーなど、“THE・二次創作”が挿入されているのも、この作品の小説版らしい。

 漫画とはまた違った萌えの世界の広がる小説版。作品のファンには迷わず勧めたい一冊である。

文=園田もなか