スキルがあるだけではダメ!? 現代における「仕事ができる人」の定義とはなにか

社会

公開日:2020/2/23

『「仕事ができる」とはどういうことか?』(楠木建、山口周/宝島社)

「明らかにプレゼンテーションのスキルがあるにもかかわらず、話がものすごくつまらない人」がいる一方、「プレゼンテーションの構成や方法は出鱈目なのに、話に大いに引き込まれる人」もいる。

 どちらを「仕事ができる」と言えるだろうか。周囲の「仕事ができる」人を思い浮かべてみよう。「できる」と表現するには、優れた「スキル」があるだけでは不十分のようだ。

『「仕事ができる」とはどういうことか?』(楠木建、山口周/宝島社)は、「仕事ができる」ということについての、楠木建さんと山口周さんの対談本だ。

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 彼らはそれぞれの著書『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』(光文社)などで知られる。経営戦略を研究する立場であり、実際に名だたる企業の経営にも関わってきた事実が、対話の信頼性を裏打ちする。

「仕事ができる」とは単に「スキル」があることではない、と楠木さんは考える。

 プレゼンテーションのスキル、コミュニケーションのスキル、資料作成のスキル――。確かにスキルは、仕事を遂行するためには重要だ。その上、定量的に測れて、職務経歴書に明示することができる。しかし、十分ではない。ビジネスには「センス」も必要だ。「センス」とは、例を挙げれば「プレゼンは出鱈目なのに人が引き込まれるような力」と言える。

 山口さんは「サイエンス」と「アート」をキーワードにして考える。「サイエンス」は「スキル」のように立証可能で再現性が高く、「アート」は「センス」のように計測できないにも拘わらず「仕事ができる」に関係が大きいそうだ。

 つまり「スキル」や「サイエンス」は代えが利くが、「センス」や「アート」は余人に代えがたい。

“「この人じゃないとダメだ」と思わせる、それが「仕事ができる人」です”

 対話の中で参照している企業は、ホンダ、テンセントグループ、ユニクロ、IBM、東芝、サントリー、ネットフリックスなど多岐に亘る。

 また、彼らの対話は「仕事ができる」をテーマにしていながら、『弓と禅』(オイゲン・ヘリゲル/福村書店)や『直観を磨くもの』(小林秀雄/新潮社)などの書籍、寅さん、『巨人の星』、トルストイ、千利休、アメリカ国務省、クリント・イーストウッド、AC/DC、Suicaのデザインといったように、幅広いジャンルを行き来する。

 豊かな対話をもとにして、「この人じゃないとダメだ」と周りから思ってもらえるエッセンスを考えてみてはいかがだろうか。

文=えんどーこーた