夫の浮気でバツイチになった専業主婦が、家事スキルをいかしてゴミ屋敷を変える! 自信がないシングルマザーの再生物語

文芸・カルチャー

2020/2/17

※「ライトに文芸はじめませんか? 2020年 レビューキャンペーン」対象作品

『今日は心のおそうじ日和 素直じゃない小説家と自信がない私』(成田名璃子/メディアワークス文庫/KADOKAWA)

 家事をきちんとこなせた朝は、それだけで良い1日の始まりを予感させる。顔が映りそうなくらいに綺麗に磨かれたフローリング。心地よい風になびく洗濯物のせっけんの香り。パリッとアイロンをかけた清潔なワイシャツ。炊き立てのご飯からふんわり立ち上る温かい湯気……。どうして家の中が整うだけで、こんなにもスッキリとした気分になるのだろう。きっと家事とは、人の「暮らし」を整えること。家事をすることは、1日を整えることと同義なのかもしれない。何もせずに享受する側はすべて「当たり前」に感じてしまいがちだが、家事をきちんとこなす主婦/主夫ほど、尊敬すべき存在はいないのだ。

 とはいえ、毎日家で家事をこなす専業主婦たちは自分に自信を失いがち。「私なんて何の取り柄もない」と自分のことを卑下している人も多いように感じる。だが、そんな必要はない。家事だって、立派なキャリアのひとつなのだ。『今日は心のおそうじ日和 素直じゃない小説家と自信がない私』(成田名璃子/メディアワークス文庫/KADOKAWA)は、そんなことを思わせてくれるビタミン本。自分に自信を失っている主婦にこそ読んでほしい作品だ。

 主人公は、家事が得意な専業主婦・涼子。結婚してから10年間、懸命に家族を支えてきた彼女だが、ある時突然、夫から離婚を言い渡される。しかも、原因は、夫の浮気。夫は、涼子とは真逆のタイプ、キャリアウーマンの女性と不倫関係にあったようだ。小学3年生の娘とともに、実家に帰ることになる涼子だが、実家では兄一家が暮らしている。兄嫁もキャリアウーマンタイプ。“出戻り”の涼子のことをよく思っていないようで、涼子は実家でも肩身が狭い。これからどうやって暮らせば良いのかと悩んでいたある日、隣町の小説家が家政婦を募集しているとの話が舞い込んでくる。その小説家の名は山丘。実際に会ってみると、50代に入ったばかりだという実年齢よりもずっと若く、顔も整っている。だが、いつもよれよれのジャージを着ているし、かなり気難しく……。ふれ合いを拒む山丘と、行き場のない涼子。これまで彼が雇った3人の家政婦たちはあっという間に辞めてしまったというが、涼子は彼の元でちゃんと働くことができるのか?

 山丘の家は、足の踏み場もないほどのゴミ屋敷。どうしてこんな状況になってしまったのかといえば、最愛の妻を亡くしてから、こうなってしまったらしい。今までの家政婦たちは皆ゴミ屋敷のあまりの惨状にさじを投げた。だが、涼子は、むしろ掃除欲をふつふつと燃えあがらせ、あっという間に家を整えていくのだ。そして、山丘の暮らしが整うにつれて、最初はぎこちなかった涼子との関係も、家事が魔法のように変えていく。その様子を見ていると、こちらまで心が晴れやかになる。

 家での仕事だって、かけがえのないもの。生活を支える大切な仕事だ。自分のことに自信が持てない時、ぜひこの本を読んでみてほしい。涼子が自信を取り戻すまでの物語は、読むと、こちらまで元気が湧いてくる。読後は自分自身を肯定できるようになる温かい物語だ。

文=アサトーミナミ

■『今日は心のおそうじ日和 素直じゃない小説家と自信がない私』作品ページ
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