悶え喘ぐより、もっと心地いい声に癒される! 現役AV女優・紗倉まなさんがエッセイ集『働くおっぱい』を自らの朗読でオーディオブック化

エンタメ

公開日:2020/2/18

『【紗倉まな朗読】働くおっぱい』(紗倉まな/KADOKAWA)

 ダ・ヴィンチニュース上で2018年7月から連載されていた、現役AV女優・紗倉まなさんによる人気エッセイ『働くおっぱい』。

 どんなことが書かれているか興味本位で読み始めた人も多いだろうが、ユーモアを交えながら独自の感性で書く文章に注目が集まり、みるみる120万PV超え! 昨年、早くも書籍化された。

 すると、当然のことながら「せっかくだから本人の声で書籍を朗読してほしい」というリクエストが。そこで今回、オーディオブック化が実現したというのだからメデタイ!

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 はてさて、どんなエロい声が耳元に囁かれるのだろうか。胸ならぬ“おっぱい”を弾ませながら視聴してみると…

女性が聞いても引き込まれてしまう「癒しボイス」

 これがいい意味で覆されてしまうからビックリだ。

 鼻にかかった甘ったるい声やどこかに媚びを含んだ声が聞こえてくるのでは? とのエロ期待が多大なる偏見だったことに、まずは気づかされる(激しく反省!)。

 若い女の子ならではのかわいらしい声ではあるが、決してキャピキャピはしておらず、耳にすーっとなじんでいく心地よさ。落ち着いた語り口は、女性が聞いても思わず引き込まれてしまうほど。!

 これは紛れもなく“癒しボイス”だと思ったら、それもそのはず、紗倉さんは現在もボイスメディア「Voicy」やラジオといった“音媒体”でも、その癒しボイスで人気があり、活躍しているというのだから納得だ。

独自の感性と表現力からあふれ出す言葉たち

 そして何より、語られている内容が独自の視点でおもしろい!

 たとえば、書籍&オーディオブック名である『働くおっぱい』というワード。エッセイ連載時の担当者による命名だが、これに「殴りつけてくるような重い衝撃力を持ったパワーワード感」を覚えた紗倉さんにかかると、

「おっぱいを揺らしながら、もしくは心を揺らしながら働く、ありとあらゆる人の呼称である。このとき『働く』は『労働』という意味だけでなく、『励む』『楽しむ』『苦しむ』『感動する』『学ぶ・勉強する』『家事をする』など、主に『生きること』全般を指す」「よって社会人だけでなく、学生や主婦にも当然ながら適用される」

 という理解になる。

 これだけでも、その洞察力の鋭さや思考力の深さに感じ入ってしまうのだが、自らを“えろ屋”と称し、“セックスを見せることを商売に選んだ”と言い切る潔さから語られる内容は、「AVの撮影現場は、肉棒という刀に狩られる戦場である」(「8年目のAV女優」より)など、どれも独自の視点と表現にあふれている。

AV女優として、ひとりの女性として

 エピソードの内容も、「AV女優と職業記入欄に書いたら」「ウケる喘ぎ声」「AV女優は恋愛NG」などAV女優ならではの体験や苦労を紹介していたり、「サマーおっぱい問題(プロブレム)」「夜の営みと生理」「7年間AV女優をやっていて、最もヒットした作品」ではひとりの女性として性の問題を語っていたり、と実に幅広い。

 そして、そのどれもが“こんなことがありました、チャンチャン!”でとどまらず、「負の願望が、AVというフィルターを通すことでフィクションとして成立して、現実世界において抑制されてるなら万歳! ってなるけどさ、それを鵜呑みにされたり女性側に強いることになってしまったら、という恐怖感もあるのだよな」と、彼女ならではの考察や思考へ広がっているから、これはもう聞きごたえ満点なのである。

“AVの撮影現場について知りたい”という聞き手の欲求を満たしつつも、“働くとは”“女として生きるとは”に真摯に向かい合おうとする姿勢は、老若男女を問わず好感が持てること間違いなしだ。

「あとがき」の中にある「『働いている』という自覚は、下等とか高等とか、認知とか信用などの質や業種に関係なく、常に自分で『発生させなければならない』ものであると思っている」という一文などは、仕事に疲れてしまったときに耳にすると心にしみじみ響いてくることだろう。

 心地よい声で就寝前に癒されるのもよし、“音漏れ”問題が心配な通学・通勤車中で聞いても大丈夫!

 すでに書籍は持っているけれど本人の声で語り聞かせてほしいという人はもちろん、「紗倉まな」を知らない人、はたまた「AV女優なんて…」という偏見をいまだに抱いている幅広い世代の男女にこそ ぜひ一度聞いてみてほしい。

文=岸田直子

【著者プロフィール】
さくら・まな●工業高等専門学校在学中の2012年にSODクリエイトの専属女優としてAVデビュー。2015年にはスカパー!アダルト放送大賞で史上初の三冠を達成する。
初めて書き下ろした小説『最低。』は瀬々敬久監督により映画化され、東京国際映画祭にノミネートされるなど話題となった。
近年は大学での講義もこなし、AV女優として異例のニュース番組レギュラーコメンテーターに抜擢。文化人としての顔も持つ現役えろ屋。

■配信URL
Audible:https://www.audible.co.jp/pd/B084FPTDL7
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B084FQKNBW

<朗読作品>
配信プラットフォーム:定額制オーディオブック配信サービス「audible」
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