失敗をなくす、本番に強くなる…今欲しい力をすぐ手に入れるための“なりきり術”

ビジネス

2020/2/18

『ALTER EGO 超・自己成長術 「あなたの中の別人格」で最高のパフォーマンスを手に入れる』(トッド・ハーマン:著、福井久美子:訳/ダイヤモンド社)

 人の前で緊張しそうな時や、やるべきことになかなか集中できない時、「自分が映画やアニメの主人公のような有能なキャラクターだったらいいのに」と思う。とはいえ、同僚にこう口にしたら、そんな馬鹿げたことを考えずに自分のスキルを上げるべく努力しろよと言われそうだ。いやいや、だが最新の理論では、「別のキャラになったつもり」が苦手なシーンを乗り切るのに有効な手段だということがわかってきたという。『ALTER EGO 超・自己成長術 「あなたの中の別人格」で最高のパフォーマンスを手に入れる』(トッド・ハーマン:著、福井久美子:訳/ダイヤモンド社)で、その詳細を見ていこう。

■いつも大事な時に失敗…をなくすことができる!?

 15歳のアンソニーは、バスケットボールに打ち込む少年。名門校から声がかかるほどの技とスペックを持つ。しかし、重要な試合になればなるほど、チャンスを生かせない。ゴールが狙える時に、失敗を恐れてチームメイトにパスをしてしまうからだ。アンソニーは、これが技術や練習の問題ではなく、自分の心の問題だと気づいているが、なかなか改善ができない。

 本書の著者ハーマンは、彼に次のような提案をした。「アンソニーという自己を脇に置いて、きみが試合を支配するために使うオルターエゴをつくろうじゃないか」(後に説明するが、オルターエゴとはいつもの自分ではない別の人格のこと)。「きみが体現したい人、キャラクター、物、動物はいるかい?」とハーマン。アンソニーは「黒豹」と返答。するとハーマンは、アンソニーに、試合の時は黒豹としてプレイをするようアドバイスをした。

 それ以来、アンソニーは、コートに入る瞬間に意識を切り替える。自分は、素早くしなやかな動きで臆することなく獲物(ゴール)を狙う黒豹だと。こうして、彼は、失敗を恐れずに目的を達する力を手に入れたという。

「オルターエゴ」という聞きなれない言葉が出てきたが、要は、この人のようになりたいと思う理想の人物になりきること。実在の人間でなくてもよく、映画やアニメのキャラクターでもよいし、無機物や動物でもよい。

 人格を変えるというと、ちょっと怖い感じがするかもしれないが、一定の時間に限る人格であることと、結局は本来持っている力を引き出すための枠組なので、不安を抱く必要はないそう。どんな人でも普段から無意識のうちに、仕事の顔、家の顔、友人間の顔と、違う面を見せている。これを意識的に行うと捉えるとわかりやすいかもしれない。

 アンソニーの例なら、普段の自分なら勝手に動いてしまう“失敗を恐れる脳の回路”をコートに持ち込まないということが、オルターエゴを利用することによって可能になったのだ。

■オルターエゴになりきるコツは?

 より有効なオルターエゴの作り方を本書から2つ紹介しよう。1つ目は、「ストーリー」だ。なりたいと思うキャラクターの表面だけではなく、そのキャラクターに自分のこれまでの成長を重ね合わせた物語を持たせるのだ。自分と変身後のキャラクターとのシンクロ率が上がり、なりきり度が上がるはず。

 2つ目は、「アイテムの使用」だ。眼鏡、指輪などといった物を用意して、人格ごとにアイテムを決めておくのだ。それを身に着けると変身し、外すと素に戻るという、体の動きによる変身ルールを作っておく。「なにそれ、中二病ですか?」と引くべからず。具体的な物があることで、気分に支配されることを防ぐのだから。これは想像だが、トップアスリートが試合前に決まった行動を取るのも、験担ぎだけではなく別の自分になる手順なのかもしれない。

■“別の自分”をうまく利用して、なりたい自分になろう

 オルターエゴを利用しても、それだけでは“素の自分”は成長できないのでは? と考える人もいるかもしれない。しかし、そんなことはないそうだ。「自分はできない」と思っていた自己認識が、「自分はできる」という自己認識に変わるだけのことなのだから。

 人間にはさまざまな可能性と力があるが、普段は幼い頃から身についている一定の自己イメージに合致する部分しか発揮できていないとされている。その殻を破る手助けのひとつが、オルターエゴ。「きっとできる」という認識は、普段の自己イメージにもプラスになるはずだ。本書帯に「欲しい力が手に入る!」とあるが、確かにそういうことにつながりそうだ。

 まずは身近なところから。たとえば、くまのプーさんになりきって、心からのんびりタイムを味わうとか…。タイトルには自己成長とあるが、こういう使い方だってありなのでは?

文=奥みんす