神ガミを斬る使命を背負う青年の旅を描く! 神話的なスケールの和風ファンタジー

マンガ・アニメ

2020/2/26

『神祇の守り人』(さくまれん/白泉社)

 人語を介する狐と共に旅をする青年・千里。植物の声を聞き、太陽光と水があれば生きていける彼は、穢れ零ちたカミを斬る役目を負っている。婚約者にかけられた呪いを解くために、そして自分たちの愛を成就させるために――。

 美麗ファンタジー『吸血鬼のアリア』(白泉社)で人気のマンガ家、さくまれんさん。現在、雑誌『花とゆめ』で話題沸騰連載中の『神祇の守り人』第1巻が発売された。

“神祇の守り人”とは、万物に宿る神ガミの声を聞き、浄化する神通力を授けられた者たちを呼ぶ。浄化する、とは言い換えるとカミを斬ることだ。誤った力の使い方をしているカミを斬ることで天上に戻し、輪廻の輪に還れるように千里(せんり)は神の裁きを代行する。

 彼が出会うのは、神という立場を逸脱して人間に情(こころ)を抱いてしまった神ガミたちだ。

 その土地の人々をあまねく見守らなければいけない立場でありながら、ただ一人の相手だけに愛情を注いでしまった神ガミ。それこそが穢れであるとみなす天照大御神の命を受け、千里はカミを斬り続ける。

 そんな彼もまた、ある呪縛に囚われていた。少年時代から側で仕え、やがて愛しあう仲となった巫女の志乃(しの)が人身御供にされるのを救えなかった過去があったのだ。

 志乃は神木に埋まり、千里は半分が人間、半分が植物の身体となってしまい、2人は人間同士の姿では逢えない呪いをかけられる。そう、千里の旅の相棒である狐の正体は、実は志乃なのだった……。

 旅するうちに、千里は人間に情を抱く神ガミに共感を覚えていく。自分のしていることは果たして正しい行いなのか? 神と人の領域を乱さないために、穢れを浄化し、神祇の守り人の務めを果たしていくことに、いったい何の意味があるのか?

 悩み、迷い、ときに泣きながら刀を振るう千里を志乃は見守る。自分を救うために全てを捨てて、呪いを解くため先の見えない旅路を歩む彼に、そっと寄り添う。『古事記』における憎まれっ子、ヒルコを後ろ盾とする謎めいた敵が登場する絶妙なタイミングで、第1巻は幕を閉じる。

 千里と志乃の道中はどのような展開となっていくのか? カミの穢れを斬ることに逡巡を抱きはじめた千里は、今後も使命を全うできるのか? 

 繊細な筆づかいで紡ぎ出される世界観は、日本のものでありながらもどこか異国情緒が漂い、すこぶる魅力的だ。神話的なスケールさえ感じさせる本格和風ファンタジーの続きが、もう気になって仕方がない。

文=皆川ちか