クラフトビールに酔いしれる『琥珀の夢で酔いましょう』がおすすめ!

マンガ

公開日:2020/3/1

『琥珀の夢で酔いましょう』(村野真朱:原作、依田温:作画、杉村啓:監修/マッグガーデン)

 お酒好きならば、近年の「クラフトビールブーム」に注目している人も多いはず。クラフトビールは、一般的に“比較的小規模なビール醸造所(ブルワリー)で職人が丹精込めて造る個性的なビール”と定義されています。味の統一が求められる大手メーカーのビールとは異なり、ブルワリーや産地によって味わいに違いがあるのがクラフトビールの特徴です。

『月刊コミックガーデン』で連載している『琥珀の夢で酔いましょう』(村野真朱:原作、依田温:作画、杉村啓:監修/マッグガーデン)は、クラフトビールを通じて出会った大人たちの物語。

 舞台は京都。広告代理店で働く広告デザイナーの剣崎七菜は、仕事や周囲との軋轢に悩んでいた。彼女はある夜、暗い路地裏にひっそりと店を構える居酒屋「白熊」を発見します。しかし、店内にいたのは店主の野波隆一とカメラを構えて写真を撮りまくる男性客・芦刈鉄雄のふたりだけ。まさに閑古鳥が鳴いていました。店選びに失敗したかも……と、肩を落とす七菜に店主の隆一は本日のメニュー「クラフトビールとおばんざいセット」をおすすめします。

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 そこで提供されたのが、京都にある京都醸造で造られている「一意専心」というクラフトビール。これまで「(仕事の)『お付き合い』ってイメージが強くて、プライベートまでお酒を飲みたくない」と感じていた七菜は一意専心のおいしさに感動し、クラフトビールの魅力にハマっていきます。

 同作には、先述の「一意専心」や「白夜にレモンエール」など、実在するクラフトビールが続々と登場し、作中で味の特徴を丁寧にレポートしてくれます。ビールに合う料理も出てくるので「今すぐに飲みに行きたい!」と身悶えする、まさに“酒テロ作品”なのです。また、ビールイベントの楽しみ方や、夏の夜の鴨川河川敷で飲む至極の一杯、鍋とビール、岡山城の天守閣を貸し切っての大宴会などなど、ビールのおいしさを演出する、さまざまなビールシチュエーションが描かれるのも見どころのひとつ。ちなみに、岡山城の貸し切りは2021年まで本当に実施されているそうです。オツですね……!

 もちろん、同作を味わえるのはビール党だけではありません。なかなか客足が増えない「白熊」を“なんとかしよう”と奮闘する登場人物たちの青春群像劇としても楽しめます。20代半ばで仕事に慣れてきた若手社会人の読者なら、七菜や鉄雄が抱える悩みに共感できるかも。

 今のうちに『琥珀の夢で酔いましょう』を読んで予習して、春のお花見にはお気に入りのクラフトビールを持参して乾杯するのもアリですよ。

文=とみたまゆり