昔気質のヤクザが、学校を救う!? 西島秀俊のコメディに振り切った演技も必見! 映画『任侠学園』を、Blu-rayで楽しむ!

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更新日:2020/8/26

 昨年9月に公開された映画『任侠学園』は、その名の通り“任侠もの”と“学園もの”という、一見相容れないジャンルのあわせ技である。昔気質なヤクザが生徒たちと向き合い問題を解決していく世直し映画だが、最後はじんわり心が温かくなる、ハートフルなコメディ作品だ。

 本作は小説家・今野敏の人気作・“任侠シリーズ”の第二作目に位置する『任侠学園』が原作。日村誠司(西島秀俊)は、義理人情に厚い総勢6名の弱小ヤクザ“阿岐本組”のナンバー2。社会貢献好きの組長・阿岐本雄蔵(西田敏行)が持ってくる面倒な案件に、舎弟たちはいつも手を焼いている。今回彼らが挑むのは、なんと経営不振の学校の再建。しぶしぶ学園に向かった日村が出会ったのは、事なかれ主義の校長(生瀬勝久)と、学園一の問題児・沢田ちひろ(葵わかな)、そのストーカーでカメラ小僧の黒谷祐樹(葉山奨之)など厄介な面々だった。

(C)今野敏/(C)2019 映画「任俠学園」製作委員会

 この作品の最大の魅力は、なんといっても「カタギに手を出さず」「勝負は正々堂々」「出されたものは残さず食う」という三ヶ条を守る、不器用だが憎めないアットホームヤクザ・“阿岐本組”の組員たちだ。街を歩けば地域の人と気兼ねなく挨拶を交わし、どんな小さな勝負事でも八百長はご法度、学校の警備を請け負えば夜の教室でカレーを囲む。彼らの掛け合いは本当にナチュラルかつお互いへの愛に溢れて、観ているわたしたちもまるで地域住民と同じような愛着を感じ、ヤクザなのに不思議と親近感を抱いてしまう。それもそのはず、彼らを演じた役者陣は、撮影中に“反省会”と称して日々お酒を酌み交わし親交を深めていたとか。現場は当日のセリフや演出の変更、西田をはじめとした俳優たちのアドリブも多く、毎日何が起こるかわからない状態だったそうだが、それゆえ刺激的な日々をともにし、任侠コメディというこの作品の妙を作り出したのは、役者たちのチームワークの賜物だ。

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 律儀だけれどやっぱり社会のはぐれ者である彼らが、学校に居場所をなくした生徒たちと真正面から向き合い、更生のきっかけを与えていく。常識やしがらみにとらわれず、ただ目の前の相手のためだけに体を張るその姿には、現代では希薄になった、人と人との密接な信頼関係が描かれ、だからこそラストの大団円には古き良き時代の映画のような、あたたかい感動が広がる。

 そんな本作を絶妙な加減で引き締めていたのが、阿岐本組組長を務めた西田と、脇を固める中尾彬、白竜、光石研といった『アウトレイジ』シリーズにも出演経験のある超ベテラン勢。監督の木村ひさしも助監督時代にはVシネ作品に多く関わってきた。役者もスタッフも任侠のプロフェッショナルだからこそ、ヤクザ同士のやりとりでは、学園のシーンとは全く別の映画を観ているような、緊張感あふれる場面が作り上げられている。そんな任侠映画の迫力と、人情コメディとのコントラストが、この映画を唯一無二にしているのだ。

(C)今野敏/(C)2019 映画「任俠学園」製作委員会

 また本作は、日村を演じる西島の新しい一面が詰まった、ファン必見の一本でもある。顔芸と言えるような表情だったり、コミカルなセリフやリアクションなど、ここまでコメディに振り切った西島の演技は過去なかなか見たことがない。どちらかと言うとストイックでタフな役柄のイメージが強い西島だが、組長の思いつきに振り回され、問題児たちにも翻弄され、てんてこまいする姿がなんだかかわいらしい。3月6日に発売されるBlu-rayの特典ディスクに収録されるメイキングやイベント映像では、先輩役者にからかわれ、後輩には日村さながら慕われている姿を見ることができる。素の西島の魅力がたくさん詰まった映像特典は要チェックだ。

文=原智香