女の子同士の安全なセックスや初心者向けの「自慰行為」の方法 も…多感で多様な女子高生に明るく画期的な性教育

マンガ

更新日:2020/3/7

『性教育120%』(田滝ききき:原作、ほとむら:作画/KADOKAWA)

 思春期真っ只中の学生時代、学校で保健体育の時間に受ける「性教育」。教科書通りに身体の変化や生理や妊娠については教わったものの、それはあくまでテストのための「知識」として。教室に流れる気まずい空気を感じながら「早く終われ」と思いつつ、授業を受けていた人も多いのではないだろうか? 本来ならば、性教育は自分や他者の身体と心を守るため、もっと踏み込んだ内容を教えても良いと思うのだが、現場では制約もあり、それも中々難しいのだと聞いたことがある。

 田滝ききき先生原作・ほとむら先生が作画を担当した『性教育120%』(KADOKAWA)は、そんな学校の現状に疑問を持ち、型破りの方法で性教育を行う、保健体育教師・辻尚子先生が活躍するマンガである。

 辻先生は、赴任先の女子高で、初回の授業中、生徒から「せんせーセックスってどうやって誘うんですかー」とからかわれるのだが、即座に「良い質問んん!!!」とビシィと指差しポーズで切り返し、保健の教科書の性に関するページの少なさや、内容の乏しさを嘆きはじめる。そして、「セックスの誘い方を考えてみるのはどうでしょう」と生徒に問いかけ、性がごく身近に感じられる、明るくて楽しい雰囲気の性教育をはじめるのだ――。

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 辻先生が教える女子高の教室には、BL好き女子、彼女がいる女子、猫好き女子…と、さまざまなタイプの生徒がいる。辻先生は、「保健体育の授業は男女が前提の話で超ハブられた気分!」「ゴムなんて私には関係ない」と下を向く同性の恋人がいる生徒たちにも、「デンタルダム」という女性器や肛門を安全に舐めるための薄いシートを配り、使い方も説明する。

 また、女性同士でも中々話題にしにくい「オナニー」についても切り込み、エロマンガで描かれる方法とはずいぶん異なる、自慰行為の初心者向けのやり方について、丁寧に解説する。

 高校生活を安全に最大限に楽しんでほしい辻先生は、全クラスにコンドームやデンタルダムを配り歩き、開放的な性教育を行うため、養護教諭の美人の中沢先生には時々教室に突入され、上司にも「教科書通り教えてりゃいいんですよ!」と叱られる。しかし、辻先生の性教育は、生徒には好評で、「もっとこういうの教えてください!」とリクエストされたり、授業がおもしろいから私も何かしたいと、文化祭で、生物部の生徒が動物の性に関する展示を行い、大好評を博したりもするのである。

 本書を読んでいると、学生時代、そこはかとなく羞恥心を感じながら受けていた保健体育の授業とはずいぶん雰囲気が異なることに驚いた。そして、「性」の話題は避けるべきものでも何でもなく、思春期による身体の変化の戸惑いを解消するためや、パートナーとの健やかなセックスのため、また「多様性」を理解するためにも、正しい知識や方法を教わることや議論することは、とても大切で有益なことなのだと改めて実感した。

 本書は他にも、「身体測定」や「ラブホ街散歩」など、さまざまな方向から性教育について学べる。中高生はもちろん、彼らの親世代にも読んでほしい、可愛い絵が印象的な、真面目で明るい性教育マンガである。

文=さゆ