「似非リア充」を演じると疲れるワケ。嫌われたくない症候群とは?

暮らし

公開日:2020/3/8

『“他人の目”が気にならなくなる たった1つの習慣』(植西聰/青春出版社)

 新年度や新学期が迫りくるこれからの時期。そうでなくても、さまざまな人間関係で疲れてしまうという人は多いだろう。特に、“他人の目”が気になってしんどいと感じることは誰にでもある。「気にしないのが一番」だと分かっていても、そう意識することでかえって他人の一挙一動が目につくようにもなる――そんな苦しさをやさしく包み込み、「気にしない」以外の有効なアドバイスを教えてくれるのが『“他人の目”が気にならなくなる たった1つの習慣』(植西聰/青春出版社)だ。
 
 著者の植西さんは、67万部のベストセラーとなった『「折れない心」をつくる たった1つの習慣』などを手がけ、多くの人々の心を救ってきた心理カウンセラー。

“「他人の目が気になる」という人ほど、まず気にしなければならないのは「自分自身の生き方」です。”

 そんなまえがきから始まる本書には、自己肯定感を育てる88のアドバイスが並んでいる。

「劣等感と上手く付き合うこと」が楽天的に生きる第一歩

 他人からどう見られているのか、気になってしまう…。その気持ちの裏には、劣等感が隠れていることも。人に弱みや欠点があったり、劣等感を抱いたりするのは自然な姿なのだが、他人にそれを悟られないよう隠そうとするのも人の性だ。
 
 だが、こうした行動は、他人の目が余計気になる状況を生み出してしまいやすいという。なぜなら、自分が抱えている劣等感は、隠しているつもりでも日頃の付き合いを通じて周囲の人に薄々気づかれているからだ。そして、気づいているけれど、触れないようにしようという周囲の配慮に気づいた当人は、「気を遣われている」と感じ、余計に他人の目が気になってしまう。

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 では、自分の劣等感やコンプレックスと、どうやって付き合っていけばいいのだろう? 植西さんいわく、人間は弱みを隠さない人に安心するため、欠点をさらけ出していくことが大切だそう。

 この指摘には、筆者も心当たりがある。10代の頃「人見知り」というコンプレックスを必死で隠そうと、社交的に振舞っていた時期があった。しかし、イマイチ思い通りにいかない人間関係や偽物の自分に疲れ切り、ある日、どうでもいいと開き直って劣等感を暴露する生き方に変えてみたのだ。すると、「実は私も人見知りだから、ホッとした」「意外なギャップがいいね」と、相手からいってもらえ、弱さを見せてこそ円滑に築ける関係があることにやっと気づいた。

 コンプレックスをさらけ出すことは怖くて勇気がいる。しかし、欠点や弱みは必ずしも嫌われるポイントではなく、目の前の相手の目には「長所」として映るかもしれない。そう思うと、劣等感の捉え方も変わるはずだ。

「嫌われたくない症候群」を克服するには?

 人から嫌われることにひどく敏感で、それを避けようとする。そんな心理傾向を心理学では「嫌われたくない症候群」と呼ぶ。これを克服するには、“自分を満たすこと”が重要となる。
 
 植西さんいわく、本当に充実した生活を送っている人は、必要以上に人の目を気にすることはない。周囲が自分をどう見ているかではなく、自分のやりたいことや自分の夢、目標にフォーカスを当てていけば、他人の目は気になりにくくなるのだ。

 そうはいっても、時には周りに振り回されそうになったり、同調圧力に負けそうになったりすることもある。そんな時は、現代芸術の世界で活躍した岡本太郎が述べたというこんな言葉を思い出してみたい。

“「友達に好かれようなどと思わず、友達から孤立してもいいと腹をきめて、自分を貫いていけば、本当の意味でみんなに喜ばれる人間になれる」”

「追い求める理想」があれば、人は自分が思っているよりも強く、凛と生きられそうだ。

 本書はこの他にも偉人の言葉を交えつつさまざまな角度から、ありのままの自分で楽天的に生きるためのヒントを数々伝授してくれる。苦手な人との上手な付き合い方や、噂話・陰口が気にならなくなる思考法など、職場や身近なコミュニティですぐに役立ちそうなアドバイスが収録されている。

「他人の目が気になる」という気持ちの裏にある劣等感や物足りなさは、ネガティブなものとしてひとりで抱え込まず、「自信」という武器を得るための大事なステップにしていこう。

文=古川諭香