友だちってどうやって作るの? 入園・入学や新学期を迎える子どもに贈りたい絵本「えんぴつとケシゴム」

文芸・カルチャー

公開日:2020/3/13

『えんぴつとケシゴム』(カレン・キルパトリック、ルイス・O・ラモス・ジュニア:文、ヘルマン・ブランコ:絵、高畑正幸:訳/KADOKAWA)

 もうすぐ入園や入学、新学期の季節。子どもは新しい環境に入っていく楽しさの反面、友だちとうまくやっていけるかどうか不安を抱えているかもしれません。

 そんな子どもにすすめたいのが、昨年アメリカで刊行されて話題となり、日本でも3月13日に発売される絵本『えんぴつとケシゴム』(カレン・キルパトリック、ルイス・O・ラモス・ジュニア:文、ヘルマン・ブランコ:絵、高畑正幸:訳/KADOKAWA)です。

 描かれているのは、えんぴつとケシゴムが友だちになって“えんぴつケシゴム”に成長するまでの物語。「書く」「消す」と相反する存在のように思えるふたりですが、どのように友情を育んだのでしょうか?

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 えんぴつは絵を描くのが大好き。今日もひとりでページいっぱいに絵を描いていると、そこへケシゴムがやってきて、絵の一部を消してしまいました。「絵に消すことなんて必要ない」と考えていたえんぴつは、ケシゴムのやることが気に入りません。

 ところが、ケシゴムが消すと、ビルの間に空が見えてきたり、真っ暗だった夜空に星が輝き出したりと、余白ができたことで絵の魅力が増していくのがわかります。

 さて、ケシゴムが消したのは絵のどこ? そんな間違い探しも楽しめるページです。

 ケシゴムが消して「迷路」が現れると、さっきまで不機嫌だったえんぴつは大喜び。迷路を見ると線を引きたくてたまらなくなるのです。迷路で間違えてしまっても、ケシゴムが少しだけ迷路の線を消して、ゴールまで導いてくれました。

 なかなか難しい迷路! えんぴつをゴールまで連れていけるように子どもと一緒に遊びたいページです。

 一緒にいると前より素敵な絵が描けることがわかったふたりは、えんぴつとケシゴムがくっついた“えんぴつケシゴム”として、ずっと友だちでいることを誓い合いました。異なる特技で力を補い合い、最強コンビとなったのです! その後は…“えんぴつケシゴム”の未来に期待が高まるようなラストが待ち受けています。

「友だちっていいな」子どもの不安を和らげる

 友だちへの声かけの仕方や友情の育み方を、文具キャラクターのコミカルな絵を通して教えてくれる本書。

「気に入らない」という感情を持つことは決して悪いことではなく、それが相手に興味を持つきっかけになることもあれば、相手の影響で考え方が変わり、それを機に将来の可能性が広がることも。相手の考えは自分とは違っていて、その中にも受け入れられる部分を探すことで友情は育まれるのだと、改めて知らされる想いでした。

 もし子どもが苦手に感じている相手がいたら、この本を読みながら相手の気持ちを想像して、対応の仕方を話し合ってみてもいいかもしれません。

 間違い探しや迷路で遊びながら、「友だちっていいな」と思わせてくれる絵本。これから新しい環境に羽ばたく子どもの不安を和らげてくれそうです。

文=麻布たぬ