「家電」と結婚した社畜リーマン! 感情がないはずの妻との暮らしにニヤニヤが止まらない

マンガ

公開日:2020/3/15

『僕の妻は感情がない01』(杉浦次郎/KADOKAWA)

 恋愛は不合理の連続だ。相手が好きな人だと、特に用事もないのに話しかけてみたり、喜ばせたくてプレゼントを贈りたくなる。ただ効率よく生活するだけなら、決して必要のない“何か”――。『僕の妻は感情がない01』(杉浦次郎/KADOKAWA)の主人公は、そんな感情を、あろうことかロボットに対して抱いてしまう。
 
“社畜”サラリーマンの主人公・タクマは、ある日中古の家事ロボットを買った。ミーナという名前の、女の子の姿をしたロボットだ。料理や皿洗いをしてもらうために買ったのだが、自分のために食事を作る彼女の姿を見るのは想像していた以上に幸せだった。たまたま酔っぱらっていたタクマは、彼女にこんなことを言ってしまう。

「僕のお嫁さんになってくれない?」

 もちろん、タクマだって冗談のつもりだ。ミーナはあくまで家事を手伝うだけのロボット。生身の恋人のように、心を通わせる存在ではない。だが…

「…かしこまりました」

 そう答えたミーナが作ってくれたオムライスには、ケチャップで「LOVEタクマ」の文字が。その日から、ミーナはタクマの「お嫁さん」として振る舞うようになる。それは、持ち主の生活を助けるただの家事ロボットとしては、不合理極まりない行動だった。

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 ミーナはロボットなので、当然ながら感情表現が豊かではない。思いっきり笑うことはないし、言葉づかいも常にタクマに対して敬語だ。だからこそ、少しでも人間らしい一面を見せるとき、タクマ(そして、ふたりを見守る読者)は、彼女の愛らしさに心底悶えてしまう。
 
 たとえば、「お布団一緒に入ろうよ」とタクマが誘ったとき。ミーナは「おすすめしません。質の高い睡眠のためにはスペースを十分に確保する必要があります」と、ロボットらしく合理的に断る。それでも、タクマが彼女の名前を呼び続けていると、もぞもぞと同じ布団に入ってくるのだ。ロボットと一緒に寝るだけのシーンで、こんなにもドキドキしてしまうとは…。

 それからも、ふたりは不器用ながらも次第に距離を縮めていく。ピクニックに行ったり、プレゼントを渡したり。その関係は、もはや「家事ロボット」と「所有者」ではない。不合理を積み重ねる彼らを、この先いつまでも見守りたくなる。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7