事件解決の決め手は、相手の感情を読む能力! 凸凹コンビが猟奇事件に挑むクライムサスペンス

マンガ

更新日:2020/3/18

『警眼-ケイガン- (1)』(早坂ガブ/小学館)

 現在「トランプ」というとアメリカ大統領が思い浮かぶが、それ以前には「カードゲーム」のほうが一般的であったに違いない。私はトランプのゲームでは「ポーカー」が好きで、展開によっては相手より悪い手札であっても勝利できる点が魅力だ。例えばポーカー用語でいう「Tell」(テル)は、相手の表情や仕草からその心理を読み解くものであり、そこから手札を推測することもできる。そしてもし、その「テル」が視覚的に「読めて」しまうとしたら──。『警眼-ケイガン- (1)』(早坂ガブ/小学館)は、そんな異能を持った刑事がさまざまな猟奇事件に挑んでいくクライムサスペンスだ。

 物語は議員の息子を送検した警部・大黒天音が、「捜査第六課事件検証係」に異動となるところから始まる。この捜査第六課は別名「ロクジ」と呼ばれ、これは「南無阿弥陀仏」の六字が死体を指す、警察の隠語が由来。つまり六課に回されたら「死んだも同然」ということなのだ。大黒が六課へやってくると、部屋にいたのは恵比寿警(えびす・けい)という刑事、ただひとりであった。この恵比寿は競馬やポーカーなどギャンブルが大好きで、巨乳の大黒に鼻の下を伸ばすクズっぷり。しかしウソか真か、彼は他人の表情から秘められた感情「テル」を見抜くことができるという。

 大黒は恵比寿を無視し、自らが追っていた裏カジノが開催されている雑居ビルへ出向いていた。しかしそこには、先回りしてポーカーに興じる恵比寿の姿が。彼いわく「興奮」した大黒のテルを読んで、現場待機していたのだという。単なる偶然だと思う大黒であったが、ここから事態は急展開を迎える。このカジノのオーナーが殺害されたのだ。しかも両目をえぐり取られるという猟奇的な殺され方で…。

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 恵比寿はわざと部屋中に聞こえるように事件のことを話しながら、その話に反応する「テル」を見せた人物を探す。結果として殺害されたオーナーには恋人がおり、別れたがっていたことが判明。第一発見者の女性その人が恋人であったことが分かり警察に連行されるが、実はここで解決ではなく裏でそれを見てほくそ笑む者がいた。

 恵比寿はその「テル」を見逃さなかった。彼は真犯人であるバーテンの「男」に心理戦を仕掛け、事件の真実を解き明かす。バーテンはオーナーの持つ「瞳の色」に魅了され交際していたが、オーナーの瞳を誰にも渡したくなくて殺害し、彼の目をくり抜いたのであった。ギャンブル好きの恵比寿は事件解決の瞬間、犯人に対してこう宣言する──「さあ、決着(ショウダウン)だ!!」と。「ショウダウン」とはポーカーでいえば「手札を見せること」であり、つまり決着のときなのだ。

 こうして「ロクジ」に誕生した凸凹コンビ・大黒と恵比寿は、彼らの前に現れる次なる難解な猟奇事件に立ち向かっていく。そういえば「死者と対話できる能力」を持つ刑事が登場する『BORDER』や、主人公が高い記憶能力で事件の証拠を見出す『ATARU』など、特殊能力で事件を解決するクライムサスペンスと実写ドラマの親和性は結構高い。本作もあるいは──などと思いつつ、登場人物に誰を配役するかなど想像しながら楽しむのも一興なのである。

文=木谷誠