文字数の申し子Vanessa氏、ワールド全開の初エッセイに救済される読者が爆増中

文芸・カルチャー

公開日:2020/3/18

『自尊心削られながら個性を出せって、どんな罰ゲームだよ?』(Vanessa/KADOKAWA)

 ネガティブや自虐が「人の不幸は蜜の味」とばかりに支持を集める世の中で、悩みや葛藤に向き合う姿勢の生々しさで人々の背中を押したり、クスッと笑える温かさ、人や自分に優しくなれるパワーを与える――そんな新たなジャンルを見たように思う。

 悩み事、推しの話、家族の日常etc…を早口でまくしたてる動画日記をSNSにアップし強烈な印象を残し数多の共感・支持を得ているVanessa氏。自称「口数の多いメイクアップアーティスト」から小気味良く繰り出される秀逸な語彙&フレーズ、アーティスティックなメイクで瞬く間に人気を得た彼女の自身初となるエッセイが出版。現代らしい悩みやその解決策を飾らずにブチまけた1冊に発売開始直後から「家宝!」の声が続出した。


『自尊心削られながら個性を出せって、どんな罰ゲームだよ?』(KADOKAWA)という早速口数の多いタイトルにも、生きづらい世の中に対する悲痛の声、無責任な肯定と否定、そしてそれに苛まれる葛藤が表れている。内容を読み進めていくと、特筆すべき点は、ともすれば重苦しくなってしまう内容も、日記動画と同じく軽快かつ語彙力に富んだ表現でつまびらかに記されていることだ。

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 全6章から構成される本書は「個性について」「人間関係」「SNSについて」などそれぞれについて自分がぶつかってきた壁と打開するために身に着けた考え方、それを経て得た自分の変化が臨場感と疾走感を持って描かれる。多くの人が一度は抱える悩み達がVanessa流の言葉のチョイスで紡がれ、「付箋だらけになった」「活字嫌いだけどこの本は動画(笑)」「刺さることばかりでもう2周目!」などの声が上がっている。

 中でもいろいろなタイプの人を想定して各章を進める様が、気配りと経験してきたコトモノの多さを感じさせる。「こんな状況の人もいるよね?」と忙しなく且つホスピタリティ全開で一気に自分に置き換える機会を与えてくれる。そして経験から得た向き合い方を複雑な因数分解よろしく展開していくその過程で「ゆっくりで良いから自分が一番豊かになれる方法を探そう」とでも言うように「画一的でないこと」を肯定しているのだ。


 明快に正解を導くというよりは、あくまで「提案」に徹しているところに「考え方や打開策も己の個性に合わせて柔軟であれ」というメッセージを感じる。断定的に方法を絞り強い言葉で正解を示す「HowTo本」とは異なる「寄り添い型」とも言うべきエッセイだ。

 読者と対面でコミュニケーションをしているかのような口調でたくさんの「優しい助言」がちりばめられており、それが肩ひじ張らずに心地よく読み進められる所以だ。故に人生のいかなるステージに立ったときでもヒントを得るためにずっと傍に置いておきたくなるのだろう。

 そして最終章の「推し」に関しては、説明不要。何かにハマった経験のある人は心のままに共感の荒波にダイブしてみて欲しいものだ。

文=梶野紀恵


【著者プロフィール】
Vanessa
Twitterフォロワー33万人超のメイクアップアーティスト。自称・文字数の申し子。アートとも言える非日常的なメイクの投稿と、推しのこと、日常の悩み、小話を異様に猛烈なスピードで語りまくる動画日記が大反響と共感を得る。地元のあぜ道に停めた車の中から今日もパワーワードを生み出し続ける。

この記事で紹介した書籍ほか