警察組織の裏金問題の真相は? 警察組織に戦いを挑む男たちを描く「越境捜査」シリーズ第1弾!

文芸・カルチャー

2020/4/19

『越境捜査<新装版>』(笹本稜平/双葉社)

 警察が組織ぐるみで裏金を作り、幹部が私腹を肥やしているという噂は、事実なのか。火のないところには煙は立たないというから、その疑惑には、残念ながら、ある程度の真実が含まれているのかもしれない。日本の警察はどのくらい腐ってしまっているのか。その実態は、私たち市民には知るよしもない。

『越境捜査<新装版>』(笹本稜平/双葉社)は、裏金をめぐり、警察組織に戦いを挑む男たちの姿を描き出した警察小説。「越境捜査」シリーズといえば、警察小説ファンにとっては言わずもがなの人気作だが、本作はそのシリーズ第1弾。2020年4月20日(月)夜8時からテレビ東京系列にて、高橋克典、戸次重幸主演でテレビドラマが放送されることが決定した作品でもある。

 このシリーズを未読だという人も、ひとたびこの作品に触れれば、警視庁捜査一課の鷺沼友哉と、神奈川県警の“不良刑事”宮野裕之の名コンビに惹きつけられることは間違いない。そして、現実世界でも警察をめぐる裏金問題の噂は絶たないからこそ、この作品にリアリティを感じてしまうことだろう。本作を読んでいると、正義とは何なのか考えずにはいられなくなるのだ。

 警視庁捜査一課の鷺沼は、14年前に起きた時効目前の未解決事件を捜査している。それは、12億円もの金を騙し取った男が、横浜本牧埠頭で水死体となって発見された事件。事故なのか事件なのか判断がつかぬまま捜査は打ち切られ、12億の行方もわかっていないこの事件に、鷺沼は不可解なものを感じていた。

 そんな折、鷺沼のもとを神奈川県警の刑事・宮野が訪ねてくる。宮野が鷺沼に見せたのは、一枚の旧札の一万円札の新券。それは、14年前の事件で持ち逃げされた金のうちの1枚で、今は神奈川県警の裏金になっているというのだ。宮野とともに再捜査を進めるうちに次第に警察組織の暗部が明らかになっていき…。

 鷺沼は、胸に熱いものを秘めた刑事だ。納得できないと思ったら、誰になんと言われようととことん調べ抜く粘り強さがある。そんな真っ直ぐな男の相棒となる宮野は、悪徳刑事との噂の絶えない男。型破りの自由人だが、料理が趣味などの一面もあり、鷺沼との意外なコンビネーションがクセになる。

 さらに、鷺沼に協力することになるのは、ヤクザの福富。「ヤクザを協力者にするなんて大丈夫なのか?」と思うだろうが、この作品では皮肉なことに、ヤクザ社会の方が真っ当に描かれているのだ。真相解明を拒むかのような圧力の中で、個性的で憎めない面々とともに、鷺沼は警察に戦いを挑み始める。

 とはいえ、警察内部の問題とあって、私たちは思わず疑心暗鬼になってしまう。一体誰が味方で、誰が敵なのか。誰の証言が正しくて、誰が嘘を言っているのか。判断を誤れば、真相は闇へ葬られる。刑事としての勘を頼りに真相を追い求める鷺沼の姿は勇ましい。

 先の読めない展開に、ドキドキさせられっぱなし。終盤は、一瞬たりとも緊張感を緩めることができない。真実を抉り出す熱い警察小説はなんと刺激的なことか。現実世界では、こんな形で警察組織が腐っていないことを祈るばかりだ。

文=アサトーミナミ

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