『鬼滅の刃』人気キャラの知られざる過去が明らかに! 公式スピンオフ『鬼滅の刃 片羽の蝶』

文芸・カルチャー

公開日:2020/4/18

『鬼滅の刃 片羽の蝶』(吾峠呼世晴:原作、矢島 綾:著/集英社)

 今日もマンガ『鬼滅の刃』が売り切れだ。都心も郊外も、書店で取り寄せすらできない状態が続いている。

『鬼滅の刃』グッズは売り出された日に完売、コラボカフェの当選倍率は数百倍とも言われ、SNSでは毎日のように国内外を問わず、登場人物のコスプレ写真を目にする。

 なぜこんな社会現象にまで発展したのか。アニメ化が『鬼滅の刃』を有名にしたのは間違いない。

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 作画が非常に優れていたアニメ版は知名度を上げるきっかけになった。ただ私はマンガ『鬼滅の刃』を週刊少年ジャンプでの連載開始時から読んでいて、『鬼滅の刃』最大の魅力は、内容が少年マンガの域を超えたことにあるのではないかと感じている。

『鬼滅の刃』はダークファンタジー、アクション、ヒューマンドラマの3つの要素を兼ね備えている。

 舞台は大正時代の東京。鬼が人を食うディストピアと化しているが、人々は非現実的な鬼の存在を信じようとしない。当然、犠牲者の遺族は苦しみ鬼の撲滅を望む。『鬼滅の刃』主人公の炭治郎は全ての鬼を作った始祖に妹以外の家族を惨殺され、妹を鬼にされた。

 彼はやがて政府非公認の「鬼殺隊」の存在を知り、厳しい訓練を受けた末、入隊試験に合格、鬼と死闘を繰り広げることになる。

 しかし鬼にも人間である鬼殺隊にも強弱がある。始祖の側近である「十二鬼月」は鬼の中でも最も強く、鬼殺隊は最も強い隊員たちが「柱」と呼ばれ十二鬼月と対峙するのだ。

『鬼滅の刃』は単なるバトルマンガではなく、鬼殺隊隊員やもともとは人間だった鬼たちが、なぜ現在の状況に追い込まれたのかについても描いている。

 世界観にのめりこんでいくうちに、本編で描かれない登場人物の裏話や過去をもっと知りたいと読者が思うのは当然である。それを叶えたのが2019年10月に発売されたスピンオフ短編小説集『鬼滅の刃 片羽の蝶』(吾峠呼世晴:原作、矢島 綾:著/集英社)だ。

 トップの戦闘力を誇る柱たちの物語が5編と、『鬼滅の刃』の単行本巻末によく収録されるパラレルマンガ「キメツ学園」のスピンオフが掲載されている。

 女性キャラでは一二を争う人気を誇る胡蝶しのぶが鬼殺隊に入るまでの経緯、女性読者に大人気のメインキャラ・善逸と宇随天元の訓練中の裏話、ある出来事から柱たちが集まり腕相撲大会をするエピソードまである。

 すべて『鬼滅の刃』の作者、吾峠呼世晴さんが監修している公式スピンオフだ。挿絵は吾峠さんが自ら手掛け、本編では見られないイラストが楽しめる。

 また今回の短編の中心人物は、鬼殺隊の精鋭である柱だが、主人公や主人公の同期など他のキャラクターが気になった場合は、同じ著者が執筆したスピンオフ小説『鬼滅の刃 しあわせの花』も2019年2月に発売されているので、読んでみてほしい。原作とスピンオフ小説を併せて読むと、『鬼滅の刃』が数倍楽しめることは間違いない。

文=若林理央