バツ3・喧嘩・炎上…! 芸能界を干されたイケメンアイドルが結集し再起をかけて立ち上がる!?

マンガ

公開日:2020/4/26

『不祥事アイドル』(白泉社)

 歳を重ねるたびに、傷つく体験が増えていくせいか、どん底から這い上がってくる人の物語を好んで読むようになった。立ち上がり方は人それぞれだと思うが、その過程を知り、参考にするのはもちろん、主人公に自分を重ね、苦しんでいるのは決して自分だけではないことを確かめる。挫折のない人間などいない。その事実は頭で理解しているつもりでも、いざどん底に落とされると、周囲の人間が全員幸せそうに見えてひどく孤独を感じてしまう。だから、挫折を経験している人の物語は、時に共に闘う友のような存在になり、立ち上がる原動力にもなるのである――。

 慎本真先生のマンガ『不祥事アイドル』(白泉社)は、そんな挫折真っ只中にいる人を、明るく励ますちょっと変わったアイドルグループのマンガである。登場するのは、元は別々のグループのアイドルだったものの、何らかの問題を起こし、芸能界から干され、挫折を経験したイケメン4人。例えば、メンバー内最年少で一番の問題児、蕪木一世(かぶらぎいっせい)(20)は、デビュー会見でバツ3であることが発覚、即引退会見が行われるというぶっ飛び具合。そして、そんな彼と共に暮らす「おじさん」と呼ばれる東雲(しののめ)きよし(30)は、国民的アイドルグループを、芸能界の闇に触れて脱退した過去が…。また、幼なじみの橘瑠衣(24)&花笠保(24)ペアは、一度は共にデビューしたものの、保の眠り好きゆえの遅刻癖と、瑠衣の短気による喧嘩が重なり、謹慎になったという経緯があった。

 本書は、そんな挫折を味わった4人が、正体不明の謎の社長に拾われ、ちょっと訳ありアイドルグループ「SCaNDaL(スキャンダル)」としてデビュー、「失敗を知ってる俺達だからこそ届けられる勇気と希望がある」と信じ、再起の望みをかけ、どんな仕事にも果敢に挑戦していく姿が描かれている。

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 デビューイベントで勇気を出してスカイダイビングをしたのに、世間からは遊んでいるようにしか見えず、「反省知らずのパリピ集団ハシャイデル」と言われて好感度が下がったり、リップクリームのCM出演で、メンバー同士で濃厚なキスをすることになったり…。何かを選んでいる余裕のない4人は、もう一度夢をつかむために、どんな辛い瞬間も泣き言を言わず、支え合いながら、「さすがアイドル!」と言わずにはいられないキラキラとしたまぶしい笑顔で一つひとつの仕事に全力投球する。その姿からたくさんの笑いと勇気をもらい、気がつくと彼らを応援している自分がいた。

 不祥事や失敗を起こしたものに対しての世間の目は、年々、厳しくなっているように感じられる。だが、反省した後、その経験を活かして「失敗は成功のもと!」と強く信じて、前進することを決して止めない本作のアイドル4人を見ていると、長い人生、私だってまだまだ奮闘できるはず! と、生きる勇気が湧いてくる。時にはローションまみれになりながら、見ている人に夢を与える、アイドルらしからぬアイドルの魅力を、あなたもぜひ堪能してほしい。

文=さゆ