催促メールもイヤな感じにならない! 言いたいことをうまく伝えられない「気弱さんのための文章テクニック」3選

ビジネス

更新日:2020/4/27

臆病ネコの文章教室
『臆病ネコの文章教室』(川上徹也/SBクリエイティブ)

 自己主張が苦手…という気弱さんにとって、対面での会話は気苦労も多いはず。メールやチャットなど文章でやりとりするコミュニケーションでも、やはり気弱な性格が邪魔をして、言いたいことがうまく伝わらずに歯がゆい思いをする機会も多いのではないでしょうか。

『臆病ネコの文章教室』(川上徹也/SBクリエイティブ)は、口下手な気弱さんが「文章の力」で相手の気持ちをそっと変える(動かす)方法を伝授する1冊です。しかし本書は、人の心を操ったり、ダマしたりするといったブラックな内容ではありません。社会心理学や行動経済学など行動科学分野での研究に基づいたエビデンスのある理論をもとに言葉の選び方、伝え方を紹介する、新しいタイプの文章術本なのです。

 本稿では、仕事場面や日常シーンでのメールやチャットで使える具体的な文章テクニックを3つ取り上げて紹介します。

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ケース1:催促するのイヤなのに…〆切りを守ってくれない!(pp.15~20)

 余裕をもって期日を決めているのに、なかなか書類を提出してくれない…。仕事をしていると、いつも〆切りに遅れる人っていませんか。催促しなければ…と思うと、憂うつな気持ちになりますよね。

 本書では、〆切りを守ってくれない相手に催促を伝える時の対応策として、「社会比較ナッジ」を利用した文章テクニックが紹介されています。これは行動経済学に基づく考え方で、人は大多数の人がやることを規範と考え、そこから外れると居心地の悪さを感じるという心理にはたらきかける方法です。

 もっと簡単に説明すると、「あなたは非常に少数派である」という強調文を加えることで、〆切りを守ろうと思ってもらいやすくなるのです。

「明後日4月23日〆切の書類の提出につき、すでに95%の方に提出いただきありがとうございます。まだ未提出の方はお急ぎください!」

 これなら表情が見えない文面上のやりとりでも、相手にイヤな印象を与えず、自分のお願いが伝わりやすくなりそうですね。

ケース2:参加者を集めたいけど…他人に強制できない!(pp.137~142)

 人の中心に立って、何かを企画するのが苦手な気弱さんも多いはず。しかし社会に出れば、飲み会の幹事をしたり、社内行事の担当になって参加者を集めたりなどの役目がまわってくることもあるでしょう。楽しい企画ならいいですが、みんながあまり参加したがらないものの呼びかけをするとなると、なかなか大変ですよね。

 本書では、行事やイベントなどへの参加を求める時、案内状の書き方によって参加率が大きく変わることを証明した実験が紹介されています。この実験ではインフルエンザの予防接種の案内状の文面を変えることで、参加率が42%から62%に上がったといいます。

 この参加率を高めた文章のヒミツは、「不参加でも意思表示をさせる」ということ。案内状の選択肢に「参加しない」を加えることで、むしろ参加する人が増える結果になるのだそうです。

□インフルエンザ罹患リスクを減らす予防接種を希望します

□インフルエンザ罹患リスクを減らす予防接種を希望しません

 さらに上の例文のように、参加することのメリットを付け加えた文章では、より参加率が高まったといいます。このテクニックを応用してメールやチャットを打てば、気弱さんでも文章だけで参加者を増やせそうですね!

ケース3:「わかった」というけれど…家族や恋人がお願いを聞いてくれない!(pp.265~270)

 たとえば家族や恋人の身体を気遣い、検診をすすめた時、「わかった」とはいうけれど、全然行く気配がない…。会話や文面のなかに出てくる「いつか」にも「今度ね」にも当てはまる日がやってこない、という時。相手の重い腰を上げさせるには、どうすればいいのでしょう。

 本書によると、相手にお願いを聞いてほしいなら、それに向けて気持ちが盛り上がっている時に行動のきっかけを作っておくことがポイントだといいます。これは先に決めた事項が、後の行動に影響を与える「先行刺激(プライミング)効果」を利用したテクニックです。

 たとえば検診に行ってほしい場合は、病院の場所や交通ルート、受診可能なスケジュールを確認するなどが「先行刺激」にあたります。「行って行って」としつこく伝えるのではなく、「どこで受けられるの?」「どうやって行くの?」という質問をさり気なく文面に忍ばせておくと、そのうち自分から行こうと動いてくれるかもしれません。

 気弱さんが直面しがちなケースを取り上げ、エビデンスに基づく“返し”を教えてくれる『臆病ネコの文章教室』。本稿で紹介した以外にも、40以上のケースが紹介されています。

 仕事でも、プライベートでも、文面でやりとりをすることが多い今だからこそ、本書で自分が伝えたいこと・してほしいことを相手に届ける文章テクニックを身につけてみてはいかがでしょうか。

文=ひがしあや