「美しくあらねば」という呪いからの解放――“ブス活”のススメ

文芸・カルチャー

公開日:2020/5/2

『ブス活、はじめました。』(安彦麻理絵/光文社)

 多くの女性が、「女たるもの、美しくあらねばならない」という呪いにかかっているように思う。月1回、美容院でカットとカラーとトリートメント。3週間に1回、ネイルサロン。その他、脱毛、エステ、ヨガ、断食道場。さらには“内面から美しく”をスローガンに、意識高い系セミナーに足繁く通う。しかし美に囚われ過ぎた生活を繰り返しているうち、心が疲弊してしまう女性もまた少なくない。

 そんな女性たちにオススメなのが、“ブス活”だ。『ブス活、はじめました。』(光文社)の著者・安彦麻理絵氏は、同書の中で「女はだれでも自分の中にブスを飼っている」と述べる。生きていれば、素敵とはほど遠い「ブス」なことをやってしまうこともあるし、そんな自分を否定して落ち込んでしまうこともある。そんなとき、自分の「ブス性」を否定せずに肯定し、思いっ切り解放して楽しんでしまおうというのが、コレすなわち“ブス活”だ。

 例えば、「ブスメシ」を思う存分、堪能してみる。著者曰く、ブスメシとは、

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カロリー過多で、色はドドメ色の茶系。味が濃いめで、アブラも多い。そして食った瞬間、顔中ニキビヅラ状態になり、毛穴も一気に広がって、鼻の頭のコメドが、もの凄い勢いで弾けて飛び出しそうな、食ってもなにひとついいことなさげな、そんな食べ物。

 食べた直後、罪悪感でいっぱいになるのだが、これがどうにもやめられない。だったらときには開き直って、とことん味わい尽くしてみるのも愉快ではないか。

 とは言え、なかなか開き直れないという人の背中を押してくれるのが、「ブス友」である。お互いのブス性をこれでもかと解放し合える女友だち――。際どい下ネタ、ゴシップ、仕事の愚痴……失恋でもした日には、相手の男を容赦なく罵ってくれる。筆者にも中学(ブス友の巣窟・女子校だ)からの付き合いになるブス友がいるが、これまで何度、彼女に救われたかわからない。どんなに辛いことがあっても、彼女に話すとなぜか爆笑ネタに変換される。ブス友とブスメシを食べながら、ブストークに花を咲かせる「ブス会」は、わたしにとって心のオアシスである。

 美意識を高く保ち、自分磨きに励むのは素敵なことだ。だがそれだけでは、息が詰まる。ときにはブスな自分を許し、面白がり、愛してみてはどうだろう。そうすることで心に余裕が生まれ、また明日から頑張る活力が湧いてくるに違いない。「女はだれでも自分の中にブスを飼っている」――。自分の中のブスに嫌気が差したときは、この言葉を思い出してほしい。そしてぜひ本書を読み、“むしろブスなところがあるからこそ愛おしい”女という生き物に生まれたことの喜びに浸ろう。

文=尾崎ムギ子