DV、ストーカー、暴力団…トラブルに巻き込まれた時はどうすればいい? 「警察を味方につけるコツ」を元警察官が解説

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更新日:2020/4/30

『警察は本当に「動いてくれない」のか』(佐々木保博/幻冬舎)

 恥ずかしながら、私は他人に金を貸したことがある。それも結構な額を。その詳細は本題からズレるので書かない。とにかく、私は金を取り返すのに苦労した。本当に苦労した。

 このとき警察署にも駆け込んだ。「知人が約束したお金を返してくれない。これは詐欺じゃないか」と。応対した警察官は親切に私の話を聞いてくれたが、結論はこうだった。

「たとえ口先だけであっても相手に返済の意思があり、両者が連絡を取り合える状態である以上、残念ながら詐欺として立件することはできない」

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 たぶんこのような内容だった。こちらも詳細は置いておく。この経験を通して、私は2つ学んだ。ひとつは、他人にお金を貸しちゃいけないし、たとえ貸しても返済を期待しちゃいけない。もうひとつは、おそらく警察に頼るときには作法がある。多くの人が知らない「警察を味方につけるコツ」のようなものが。

『警察は本当に「動いてくれない」のか』(佐々木保博/幻冬舎)は、それを理解するためにぴったりな1冊だ。著者は、埼玉県警で28年間勤めた佐々木保博さん。現在は元警察官の経験を活かし、「民間警察」として人々のあらゆる悩みに解決策を提案する活動を行う。

 本書では、警察という組織や警察官の業務、被疑者を捜査・逮捕するための「構成要件」などを解説。そのあとに主題である「警察に動いてもらうためのポイント」を説いている。

■警察に頼るときはいつがいい?

 個人的な結論として、この本は読んで損はない。というよりトラブルなく生きられる人などいないのだから、いつか警察に頼ることを見越して、警察の実態を深く理解する「予習」につながると感じる。

 たとえば警察に頼るときは、夜間や休日ではなく、できるだけ平日の昼間のほうがよい。なぜなら夜間や休日は人手が少なくなるので、緊急事態以外の用件はできるだけ避けたい本音があるからだ。

 夫や恋人から暴力を振るわれたときは、はっきり「あの人を捕まえてほしい」という意思を示そう。警察の任務は、犯罪で受けた被害を回復させることや人格の矯正ではない。捜査によって犯罪を立証して、犯人を捕まえることだ。だから「もう暴力を振るわないよう約束させてほしい」と依頼しても無理があるし、佐々木さんによると「夫や恋人の逮捕を望まない被害者が多い」と指摘する。被害者側に逮捕の要求がなければ、警察もお手上げなのだ。

 警察に被害を訴えるときは、落ち着いて事件の概要を説明しよう。現場の警察官は、私たちの想像以上に、書類作成などの雑務に追われている。そのような状況下で、突然交番を訪れて「あいつを捕まえてほしい!」と感情的に迫っても、対処に困ることがある。警察に被害を訴えるときは、「いつどこで」「どのような状況で」「どのような被害に遭って」「犯人をどのようにしてほしいか」など、事件の経緯と客観的な事実を落ち着いて伝えよう。

 警察にはできること、できないことがある。それを深く理解した上で警察を頼らないと、「警察は何もしてくれない」という失望ばかりが生まれてしまうのだ。

■犯罪に巻き込まれないための有効策とは?

 しかし現在進行形で何かに困っている人は、本書を読んでいる余裕がないかもしれない。もしくは本書の「犯人を逮捕する構成要件」を紹介しても、少々難しいので「つまりどうすればいいの?」と余計に混乱する人がいるかもしれない。そこでここからは「警察を味方につけるコツ」をピンポイントでご紹介しよう。

【ストーカーにつきまとわれたときは】

 もしストーカーに悩んでいるときは、警察に「ストーカーに警告してほしい」とはっきりと要望しよう。佐々木さんは「ストーカー案件は警察から警告を行うことでほぼ解決する」と断言しており、むしろ「相手を刺激しないようにしたい」という被害者側の「消極的な判断」がより行為をエスカレートさせると指摘。もちろん構成要件がそろえば事件化して逮捕することも可能なので、ストーカー行為には断固たる決意で臨もう。

【暴力団にお金を要求されたら】

 何かしらのトラブルに巻き込まれて暴力団に脅されてしまうケースがある。彼らは恐喝のプロなので、その恐ろしさから「お金で解決するならば…」と考えがちだが、絶対に支払ってはいけない。一度お金を渡すと「こいつは金を払うやつだ」と認識され、何度も要求してくる。どれだけ恐ろしくてもまずは警察に相談すること。お金を支払った場合は被害届を提出すること。暴力団対策法がひときわ厳しくなっている今だからこそ、毅然とした態度で立ち向かおう。

【民事不介入だと断られても】

 警察には「公共の安全と秩序に直接関わりのない民事上の法律関係に関与することは許されない」とする原則がある。これを「民事不介入の原則」という。そのため一昔前までは、家族間のトラブルや金銭トラブルについては積極的に介入しようとしなかった。

 しかしそれはもう過去の話である。現在は、DVや虐待などは原則として事件化されている。場合によっては学校で起きたいじめも警察が介入するようになった。

 ところが現場の警察官には、業務に追われて疲弊している一面もある。そのため一部の警察官が「面倒」と感じて、「民事不介入」を理由に捜査を断るケースがある。そんなときは臆することなく「今は民事不介入なんてないはずですが?」と指摘しよう。佐々木さんいわく、これで態度が改まるそうだ。

 また犯罪に巻き込まれないための有効な防衛策がある。最後にこれをご紹介しよう。

犯罪のほとんどは、金銭をめぐるいざこざが原因となっています。そこで、金銭トラブルに巻き込まれないように用心することは、犯罪に巻き込まれないための最も有効な予防策の一つとなるはずです。

 簡単にいえば、「どんな相手であってもお金を貸しちゃイカンし、ましてや借金の保証人になるなんて禁物だ」ということだ。私が経験者だから言えるのだが、他人から金を借りようとするヤツほど、なぜか人当たりはとても良い。つまり私の独断と偏見を交えると、「人当たりの良いヤツほど金を貸しちゃイカン」ということになる。

 余談が長くなった。本書はトラブルに巻き込まれて、警察に頼るときの「予習」になる。トラブルなしの人生なんて有り得ないのだから、今から読んでまったく損はない。

文=いのうえゆきひろ

この記事で紹介した書籍ほか

新装改訂版 警察は本当に「動いてくれない」のか

著:
出版社:
幻冬舎
発売日:
ISBN:
9784344925830