ごく普通のおばさんが同性パートナーと新しい家族に。新しい「結婚」のかたちとは?

暮らし

公開日:2020/4/29

『母ふたりで“かぞく”はじめました。』(小野春/講談社)

 母と母が、ひとつの家族になった。小野さんには2人の息子がおり、麻ちゃんは1人の娘を連れて集まり、母2人子ども3人の5人家族になったのだ。当初は幼かった子どもたちも、今では大きく育った――。
 
『母ふたりで“かぞく”はじめました。』(小野春/講談社)では、そんな新しい“かぞく”がつくられたきっかけや、経験した障壁、そして喜びや難しさなどが、駆け抜けるように描かれるエッセイだ。

何の変哲もないおばちゃんの私ですが、ちょっと人と違うところがあります。それは“私がバイセクシャルである”ということ

 バイセクシャルとは、“男性も女性も好きになることがある”というセクシャリティだ。小野さんがそのことに気付いたのは、30歳を過ぎてから。男性と結婚して息子が生まれたが、元夫の仕事が忙しく、いわゆる“孤育て”生活に陥っていた。その後、元夫は外に好きな人ができたといい家を出て行き、離婚を経験した。

 孤独な子育てを助けてくれたのは、近所に住む麻ちゃんだった。長男の風邪が治らず、母である小野さん自身も体調を崩していたとき、麻ちゃんは、ウォッカの瓶を片手にぶら下げて、偶然様子を見に来た。具合の悪い小野さんをみると、瞬時に判断してテキパキとタクシーに2人を乗せ、病院に連れて行った。小野さんは、看護師の姿を見た瞬間に足元から崩れ落ちるような安堵感があったという。

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 麻ちゃんもまた、離婚した経験の持ち主。小野さんと麻ちゃんはそれぞれの離婚後に、すぐパートナーになったわけではなかったが、互いに生活を支え合っていくうちに、距離が縮まっていった。しかし、新しい家族づくりは簡単な道ではなかった。

「連れ子がかわいく思えない」と考えてしまう時期もあり、そのことに小野さんは悩んだ。また、セクシャル・マイノリティのパートナーと子育てをするのは大変だと感じた小野さんは、インターネットで同じ悩みを持つ人を探すものの、なかなか見つからない。そんな中でヒントになる言葉をかけてもらえたのは、「ステップファミリー」のコミュニティだった。

「継親は親にならなくていい」というのが基本的な考え方なんです

 それから、娘との距離の詰めかたを改めた。娘の気持ちを尊重するようになり、小野さん自身にも心の余裕が生まれてきた。「セクシャル・マイノリティであること」が、問題の本質を見えづらくしてしまうことがある。

 新しく家族になるために、立ち向かうハードルは尽きない。結婚式はどうするか、自分たちの親や子どもたちにいつどのようにカミングアウトするのか、社会保険は――。そして、今の制度では結婚ができないことに、どう立ち向かうのか。本書に綴られた彼女たちなりの「家族づくり」は、数々の問題とともに現在も続いている。やわらかい語り口の貴重なエッセイを読んで、新しい結婚スタイルを考える参考にしてもらいたい。

文=えんどーこーた