大人に足りない「感性的思考」を取り戻したい! 現代で求められるアート思考を体験してみると…

ビジネス

公開日:2020/4/30

『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(末永幸歩/ダイヤモンド社)

 クロード・モネの絵画『睡蓮』を見て、とある4歳の男の子は「かえるがいる」と言った。
 
 画面に「かえる」は、実際には描かれていない。絵から見て取れるのは、水面とそこに浮かぶ睡蓮だ。しかし、男の子は表面的には描かれていない「かえる」が水に潜っているのを、感じ取ったのである。男の子のそうした豊かな視点に、末永さんは“これこそが本来の意味での「アート鑑賞」なのだ”と感じた。大人は、絵画そのものよりも、作品名や説明文などに目を向けがちなのかもしれない。
 
『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(末永幸歩/ダイヤモンド社)は「13歳からの~」と銘打っているが、大人の読者も十分に楽しめる1冊。本書には現代で必要とされるものの捉え方や探究のスタイルが詰め込まれている。

大人に足りない感性を、どう補う?

 成熟した現代の社会では、論理や科学で解決できる問題だけでなく、センスや直感と言い表されるような方法でしか解決できない問題も数多く溢れている。旧例にとらわれずに、自分なりの見方でものごとを考える「アート鑑賞のような思考」が求められているのだ。そこで必要とされるのが「アート思考」と呼ばれる思考法である。

 末永さんによれば、アート思考とは「自分の内側にある興味をもとに自分のものの見方で世界をとらえ、自分なりの探究をし続けること」だ。これは決してアーティストやアート愛好者だけに求められる思考ではない。冒頭にあげたように、男の子が『睡蓮』の絵の中に「かえる」を見出したように、ビジネスでも日常生活でも「アート思考」を用いることは、不確実な変化が起こる時代では特に重視される。アート思考とは、上手に絵を描いたり、美しい造作物をつくったり、歴史的な美術作品の知識でウンチクを語れるようになったりするためのものではないことに要注意である。

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 アート思考を体現した著名な人物といえば、レオナルド・ダ・ヴィンチである。彼は『モナ・リザ』などの絵画作品の制作活動のみならず、科学技術の分野においても、人体の解剖や鳥の飛翔原理の分析などに没頭し、探究を続けた。彼のような探究活動は、決して天才だけに許された特権ではない。誰でも子どもの頃は、自由に想像を広げ世界について探究していたはずなのだ。

 タイトルに「13歳」とあるのは、中学校に上がり13歳のときの美術の授業で「アート嫌い」になってしまう子どもが多く、大人になってもそれを引きずって苦手意識を持っている人が多いからだという。心当たりがある方も多いのではないだろうか。

 本書は、ページをめくって6つの作品をめぐる体験型の書籍である。それぞれの芸術作品は図版を使ってわかりやすく紹介されている。本書が伝授してくれる「新しい思考」の手がかりに、あなたもきっとワクワクさせられながらページをめくることになるだろう。

文=えんどーこーた