「ブサイク系ネーム」をつけるのは親の愛情!? とんでもない海外の風習を集めてみると…

社会

公開日:2020/4/30

『ニッポンじゃアリエナイ世界の国』(斗鬼正一:監修/SBクリエイティブ)

 おうち時間が長くなった近ごろは、外の世界への恋しさが日に日に募ります。我が家ではない遠い世界に触れてみたい、苛立ちや悲しみばかりじゃない世界を子どもに教えてあげたい――そう思った時に手に取ってほしいのが『ニッポンじゃアリエナイ世界の国』(斗鬼正一:監修/SBクリエイティブ)。
 
 本書には、日本人の目には不思議に映る“アリエナイ海外の常識”が盛りだくさん。振り仮名つきのコミカルな文体で紹介される各国の“当たり前”は子どもの興味も引きやすく、親子で一緒に楽しみたくなります。
 
 世界の「アリエナイ」を知ることは、外の世界を知る第一歩。その奥に隠されている深い雑学も必見です。

我が子に「ブサイク系ネーム」をつけるモンゴル人

 少し前、日本では個性的な読み方の名前を「DQNネーム」と呼び、賛否両論が繰り広げられました。しかし、モンゴルではあえて我が子の名前に「ブサイク」や「怪物」などという言葉をつけることが珍しくないそう。一見ひどいようにも思える名づけ方。その裏には、モンゴル人ならではの“親心”があります。

 モンゴルでは赤ちゃんが幼くして死んでしまうのは悪魔が連れて行くからだと考えられてきたそう。そこで、モンゴル人は悪魔から子どもを守るため「この子はかわいくないですよ」という意味を込めて名前をつけます。特に、赤ちゃんが死んだ後に生まれた子どもにはこうした名前がつけられることが多いのだとか。日本人からしてみるとアリエナイ名前の裏には、子どもの健康を願う気持ちが込められているのです。

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クリスマスに殴り合う!? ペルー人

 日本人にとってもクリスマスは1年の中で最もロマンティックな日ですが、ペルーのクスコ州では「タカナクイ」という血気盛んな祭りが開催されます。毎年12月25日になると、人々はタカナクイの会場に集まり、1年間にトラブルがあった人と殴り合うのだとか。

 これは1年間の“モヤモヤ”を翌年に引きずらないため。明確なルールが決められており、ムチを持ったレフェリー役の人が立ち会います。こうすることで人々は気持ちがすっきりし、逆に心を開いて相手と仲良くなるのだとか。

 また、同じように気分転換が上手だといえそうなのがアルゼンチン・ブエノスアイレスの人々。仕事納めとなる12月28日から31日にかけて、現地の人々はオフィスのビルの上から紙吹雪を降らせます。材料となるのは、必要なくなった仕事の書類。紙吹雪を作り、ばら撒くことで新年に向けて気持ちを切り替えるのです。

 私たち日本人は、どちらかというと心の中に感情を押し殺してしまいやすい民族。だからこそ、こうしたユニークな気分転換は羨ましく、やってみたいと思う人も多いのでは…。

給料のほとんどを服に注ぎ込む「サプール」

 コンゴ民主共和国には「サプール」と呼ばれる、おしゃれな人たちがいます。サプールはお金持ちというわけではないのに、1カ月に稼いだお金の何倍もする洋服を買うのだそう。端的に見れば浪費のように思えますが、その裏には深いワケがあります。

 実はコンゴ民主共和国はダイヤモンドなどの資源が豊富であるがゆえに、国内での戦争が絶えません。そこで、サプールたちはおしゃれをすることで「戦争反対」の考えを示します。「平和でなければファッションを楽しむことなどできない」「服を汚したくないから俺たちは闘わない」――サプールは、そんな意思表示をしているのです。

 好きな服を自由に着るのは、私たち日本人にとって当たり前に思えること。しかし、そうした幸せがあるのは暮らす環境が平和であってこそ。体を使ったサプールの意思表示には日本人の心に刺さるものがあります。

 本書には他にも、アリエナイ文化が多数収録。ハゲであることが褒められる国や人前でオナラをしても平気な国など、世界の多様な文化に触れると、自分の価値観を見つめ直したくなるでしょう。

 SNSの普及によりさまざまな人と交流できるようになったがゆえに近年の日本には、自分とは違った考えを非難する風潮が生まれています。しかし、受け入れることは難しくても「そんな考えもあるね」と歩み寄ることができれば、社会はもっと優しく、生きやすいものになるはず。

 他者を受け入れ、自分をアップデートさせよう。そんな教えも含まれているような本書は、心のゆとりがほしい時に読みたい1冊です。

文=古川諭香