42歳で突然仕事を辞めて「ファティマ モロッコ」を起業。“好き”を仕事にする女性の生き方

暮らし

公開日:2020/5/3

『女は好きなことを仕事にする』(大原真樹/大和書房)

 「今の仕事、好きですか?」。この質問にどれくらいの女性が「YES」と答えるだろう。

 『女は好きなことを仕事にする』(大原真樹/大和書房)は、モロッコに魅了され、40歳を過ぎてモロッコ雑貨のオリジナルブランドを立ち上げた著者の、「好き」なことを仕事にする生き方をつづった1冊。今の仕事や生活に満足していない人も、著者の働き方や仕事の作り方を通して、自分らしく生きるヒントを見つけてみてほしい。

「好き」を見つけることは、自分を見つけること

 本の表紙にもなっている独特のフォルムがかわいいモロッコのスリッパ「バブーシュ」。これはこの本の著者である大原真樹さんのブランド「ファティマ モロッコ」で30万足を売り上げた看板商品だ。

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 大原さんは起業前、アパレルのバイヤーを経てスタイリストとして働いていた。転機が訪れたのは36歳の時。ずっと恋焦がれていたモロッコに初めて足を踏み入れ、そのすべてに心を鷲掴みにされたという。「こんな美しい雑貨が日本にもあればいいのに。これは自分がやるしかないのでは?」そんな思いから一念発起し、仕事を退職。42歳で自身のブランドを立ち上げた。

 当時は「突然スリッパを売り始めて頭がおかしくなったの?」と笑われたという。しかし、それから14年後。ブランドは成長し、雑誌やメディアでも取り上げられるようになった。とりわけNHK総合『世界はほしいモノにあふれてる』に出演した際は、大原さんの「好き」なものを突き詰めた生き方が反響を呼び、多くの女性の共感を得たという。

 大原さんは本書の中で、“女性だからこそ、好きなことを仕事にできる”と語る。ファッション、音楽、料理、犬や猫…。たしかに好きなものの話をしているときの女性はエネルギーに満ち溢れている。「その世界に浸れることが何よりも幸せだと感じるなら、その道を突き進む方法を探していくほうが、きっと、もっと、生きている実感が湧くと思います」(大原さん)。

 好きなことが特に浮かばない人は、まだ出会っていないだけかもしれない。ちょっと気になったことも、そのままにせずに実際見て、触れて、感じてみるとその先に新しい発見があるはず、と大原さんは語る。

始めるのに遅すぎることはなにひとつない

 大原さんのかっこよさは、「好き」なものに出会ったとき、年齢を顧みずに邁進したことだ。普通40歳を過ぎていたら、積み重ねてきたキャリアを捨てて新しいことにチャレンジしようとはなかなか思えない。でも人生100年時代の今、ちょうど真ん中は50歳。そう考えると30代、40代はまだまだ人生の折り返し地点にも到達していない。

 人生の中で、「好き」なことが思いっきりできる時間は限られている。「やりたいことがあるなら、1日でも早く始めたほうがいい。若くても、若くなくても今すぐに始めれば誰にだってチャンスはある。老後の心配をするよりも、今始めたらいつまで好きなことができるか、を考えるほうが絶対に大事だと思います」と大原さんは本書で語る。

 若いころは興味のあることに無我夢中で飛びついていた人も、年とともに腰が重くなってはいないだろうか。もしこの先「好き」なことと出会えたら、それはきっと運命。本書を読めば、「好き」をビジネスにつなげる一歩が踏み出せるかもしれない。

文=齋藤久美子