メンタリストDaiGo動画の神回が書籍化! 不要なストレスを回避し冷静な判断と備えができる「客観力」

ビジネス

公開日:2020/5/11

『ムダに悩まない理想の自分になれる 超客観力』(メンタリストDaiGo/repicbook)

 学校でも会社でも、いつも悩まされるのが人間関係だ。人間関係を壊すのは、大半が感情的な言動だ。誰もが客観的に在りたいと願うが、人とのコミュニケーションの中で、感情に流されてしまうことが多い。

「客観力」は人生において、とても重要な能力だ。客観力が高い人ほど、人生の満足度や仕事の生産性が高く、人生に明確な目標をもって生き生きと暮らしており、ストレスレベルも全体的に低い傾向がある、と科学的に証明されている。こう明かすのは、『ムダに悩まない理想の自分になれる 超客観力』(メンタリストDaiGo/repicbook)。メンタリストDaiGo氏の動画で「神回」と称された「客観力」の内容をまとめた本だ。

 客観力の効力は魅力的だが、自然に誰もが得られるものではない。客観力を邪魔する3つの「思い込み」を誰もが抱えているからだという。

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(思い込み1)自分は正確にものごとを見られるほうだ

(思い込み2)自分のことは自分が一番よくわかっている

(思い込み3)自分のことは自分で判断するのが良い

 これらの考えを多少でももっている人は、もしかしたら客観力に欠けているのかもしれない。本書によれば、人はたいていのことをゆがんだ視線で見ており(思い込み1の真実)、人は自分のことは10%しか正しく理解しておらず(思い込み2の真実)、自分のことは他人の判断に任せたほうが正確性が高い(思い込み3の真実)からだ。

 しかし、ここ数年の研究により、こういった思い込みを抱えがちな人であっても、客観力を保つ方法がわかってきた。それは、「自己省察」と「知的謙遜」を意識することだ。

自己省察=自分の欲望を正しく知り、思い込みにまどわされず真実を見抜く力

知的謙遜=自分の能力を正しく知り、より深い成長をうながすための力

 この2つの力は客観力を保つために欠かせないものとして、最近ではGoogleやAmazonなども重視し始めているそうだ。

 本書は、これらの力を、哲学者・ソクラテスの言葉になぞらえて説明している。

 聞き慣れない「自己省察」は、ソクラテスの言葉に則れば「汝自身を知れ」だ。自分のことをよくわかっていて、自分自身に安心できるような心であれば、客観性を保ちやすい。心理学用語で「セルフコンセプト・クラリティ」が高い、と定義される状態だ。

 例えば、自分の仕事が計画どおりに進まず上司から怒られた場合、セルフコンセプト・クラリティが低ければ「自分はやっぱりダメだな…」と落ち込むばかりだが、セルフコンセプト・クラリティが高ければ「自分はお客さんを喜ばせるために仕事をしている」という己のはっきりとした価値観に基づいて「今回はうまくいかなかったが、信じる価値観に従って進むことは間違っていない」と思い直すことができ、大きなストレスを抱えずに済む。

 次に「知的謙遜」だが、これはソクラテスの「無知の知」に近い。知的謙遜の大切さは、これがあれば自分が犯した失敗を客観的に捉え、改善点を学べることにある。知的謙遜に乏しければ、同じ失敗を繰り返しやすい。知的謙遜は、知的レベルとは比例しない。知的レベルが高い人であっても、自分のことはかわいい。良いことが起きれば「自分が天才だから」と考え、悪いことが起きれば「他の誰かが愚かだった」「自分が十分なリソースを得られなかった」ことを原因にしやすい。このバイアスは「根本的な帰属の誤り」と呼ばれる。

 知的謙遜を身につけるのが難しいのは、これを邪魔する思い込みやバイアスが「根本的な帰属の誤り」以外にいくつもあり、それらに引っかかりやすいからだ。

説明深度の幻想…自分の知識を実際よりも深く理解していると思い込んでしまう心理現象

レイク・ウォビゴン効果…「他人と比べたら、だいたいのことは平均以上だろう」と考えてしまう心理現象

ダニング=クルーガー効果…能力が足りない人ほど自分の能力不足に気がつくことができず、結果として「できもしないのに自信だけはある」状態に陥ってしまう心理現象

正常性バイアス…自分にとってなんらかのトラブルが起きそうな状況でも、「自分だけは大丈夫」や「今回は問題ない」などと思い込んでしまう心理現象

 災害が多い日本では「正常性バイアス」はよく知られている言葉だが、このほどの新型コロナ蔓延初期、「それほど騒ぐことでも…」と思っていた人は少なくないかもしれない。それほど、私たちは思い込みやバイアスに操作されやすいのだ。

 自己省察と知的謙遜を身につける手段は、本書に豊富に掲載されている。人間関係を円滑にするためだけではない。社会が大きく動き続ける中で、高い客観力こそが明日を生き抜く大きな力になりそうだ。

文=ルートつつみ