二重スパイは収入も二重!? 第二次大戦下で繰り広げられた緻密で熾烈な情報戦

社会

2020/5/21

『ドキュメント第二次世界大戦 情報戦略の真実 スパイ合戦から日本空襲計画まで』(吉田一彦/PHPエディターズ・グループ)

 今、ネット上では、コロナウイルス感染症騒動のニュースにともない、この騒動にまつわる陰謀論や都市伝説が盛り上がりをみせている。アップされている情報を無条件で信じるのはいけないが、まさかと思うような情報の真偽を推察する“探偵ごっこ”にはまることもある。これをきっかけに、時代は違えど、「情報の価値」が異常に高まったとされる、過去の歴史を振り返ってみるのはどうだろう?
 
『ドキュメント第二次世界大戦 情報戦略の真実 スパイ合戦から日本空襲計画まで』(吉田一彦/PHPエディターズ・グループ)は、第二次大戦中の英国、ドイツ、ソ連、米国が行った“裏の”情報戦や諜報活動を描いた1冊。いわば、「日本の学校教育の中では絶対に教えられない」という内容だ。

「二重スパイ」は実在する?

 戦争中にスパイが活躍していたことは映画などの影響もあり知っている人が多いだろう。スパイとは、例えば、親日家の技術者として日本に住みながら、軍部の秘密情報をソ連に流しているといった人々のことだ。

 しかし、英国にはもっと上をいくシステムがあった。それが、二重スパイだ。要は、敵国のスパイを、英国のスパイとして使うのだ。そんなことが可能なのか? と思うが、その手順は以下の通り。

 まず、ドイツ人スパイ(仮にAとしよう)を捕まえ、「生かしておいてやるから英国のために働け」と説得する。次に、Aに、このぐらいならいいかなという程度の英国の機密事項を握らせる(ときには、ドイツを錯乱させるための偽情報も混入)。そして、Aを母国ドイツに帰らせて、英国が握らせた情報を、さも自力で探った情報のように軍の上層部を前に披露させる。しかしAには、ドイツ軍での会話中に今後の計画を聞き出し、手紙で英国に知らせるように指示してあるのだが…。

 このようにして、英国はドイツ人スパイを、英国のスパイとして働かせていたという。その上、Aが本国のドイツに寝返らないように、A には24時間体制で目を光らせる英軍の監視役が付けられていたというから、相当手が込んでいる。

 英国は、こうした二重スパイから得た情報の活用により、ドイツ軍による空襲の成果を大きく下げさせたという。ちなみに、Aへの報酬はドイツ軍から出るので、英国はタダで情報を手に入れていたことになる。

ソ連の対日参戦は密約通り!?

 次は日本にも深く関係する話題を。

「約束は守る」「自分の正義に恥じないよう振る舞う」といった日本の武士道的美徳からいうと、国と国の間で結ばれた条約は絶対に守られるべきだと思うだろう。だからこそ、第二次大戦の終戦間近にソ連が「日ソ不可侵条約(日ソ中立条約)」を破って攻めてきたときは、ショックだったに違いない。しかしソ連は、既に1945年2月のヤルタ会談(英米ソが戦後の世界の舵取りを話し合った会談)の時点で、この条約を破ることを英米に密約していたという…。

米国は親中国だった?

 さらに驚くことに、米国は、日本が真珠湾を攻撃したことによって始まった太平洋戦争よりもずっと以前に、日本の占領下にあった中国に金銭と武器の援助を行っていたという。さらには、1940年頃から中国空軍による日本本土空襲を模索していたというのだ。表向きには、米国務長官ハルと日本の野村大使が平和的な解決に向けて連日会談をしていた時期に重なる。

 一般的な考えだと、「約束事に表と裏があるなんて汚い」と思うが、世界における「外交」というものは、表も裏も関係なく、また汚いも綺麗も関係なく、自国の利益を多くもぎ取ってくることなのだろう。密約も裏切りもあり、「お前もずるいが、俺もずるい」と競り合うゲームの中で、自らの得を最大限に引き出せたら、それで勝ちという世界観なのだ。

 情報には人や国を動かす大きな力がある。私たちが今見聞きしているテレビのニュースやネット動画も、その情報を発信しているのはどういう立場の人なのか、その人にとってこの情報を流すメリットはどこにあるのか――と、考えながら情報を得て、楽しむべきなのだろう。まあ、現実にはこうやって頭を使うことは、なかなか面倒くさいことなのではあるが。

文=奥みんす

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