【3分で読んだ気になる】三島由紀夫のおすすめ4作品。ステイホームをいかして名作に挑戦!

文芸・カルチャー

公開日:2020/5/24

 作家、三島由紀夫。作品を読んだことがない方でも、その最期はご存じではないだろうか? 1970(昭和45)年11月25日、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地にて、バルコニーから自衛隊決起を促す演説をした直後に割腹自決した。享年45。

 今年は、三島の死から50年目の節目にあたる。未読の方も再読だという方も、続くステイホーム期間を利用して、彼の作品を読んでみるのはいかがだろうか? 死に方が強烈な作家だけに「変わった作家」という印象だけで、作品が過去の名作になってしまうのはあまりに惜しい。ここでは、主に未読の人向けに、初心者でもわかった気になれるような読書順で紹介してみたい。(ガチ三島ファンの方にはツッコミ所満載でしょうが、名作を振り返る気持ちで読み進めてください)

『潮騒』 1954(昭和29)年

 まずは、青春恋愛小説として何度も映画化されている『潮騒』はどうだろう。

advertisement

 長(中)編小説というボリュームがあるので、文章を読むのに苦手意識のある人は、映画で観るのもあり。舞台は、伊勢湾の神島(作品内では歌島)。若く純粋な漁夫と海女の恋愛物語で、2人の純粋さと背景の美しさは、まるで神話のようだ。

『金閣寺』 1956(昭和31)年

 次は、少しダークな印象のものをということで、『金閣寺』をおすすめしたい。

 内容は、寺に弟子入りした青年が、絶対的な美の象徴である金閣を背に、人より劣った自分自身について葛藤する…というもの。実は、この作品は実際に起きた「金閣寺放火事件」が元になっている。もちろん、登場人物の名前や人物像は三島流に変えた上でフィクションとして仕上げられている。金閣寺を形容する華麗な文章表現にも注目だ。

 主人公にとっての青春は、最初から最後まで暗い。三島は彼に光ある成長を与えないのだ。自分で自分自身の存在に耐え難くなった、その頂点がラストシーン。主人公は、自分を焼失させるか、自分とは対照的な存在「金閣寺」を消し去るのか…。

『仮面の告白』 1949(昭和24)年

『金閣寺』の暗さに触れると、作家本人がどんな人物だったのかが気になってくるだろう。ということで、次は『仮面の告白』を。

 こちらは、小説というより三島由紀夫自身の内面の告白だ。幼少の頃の思い出から始まるが、その文章は幸福なタッチではなくどこか空虚。青年期になると、そんな空虚な自分自身を、世の中という舞台の上で仮面を着けて生きる者という言葉で表す。そういった三島の実直すぎる告白には現代でも共感する人が多いのではないか。

『豊饒の海』 第1巻『春の雪』連載開始 1965(昭和40)年

 三島の空虚な暗さと、それに反するような華麗な文章に慣れてきたら、今度は長編にもチャレンジしたい。晩年の作品『豊饒の海』はいかがだろうか。こちらは、文庫で4巻と大変長い。といっても、全部続けて読もうと意気込まなくても大丈夫。1巻ごとにタイトルが付き、物語は完結しているからだ。

 1巻目は『春の雪』。大正期華族社会における禁断の恋だ。お互いに愛しあってはいるものの、宮家からの求婚を受け入れるしかない女性と、叶わない恋の中で現実的な生から逸脱していく主人公。その結末はこの世ではあり得ないような美しさ、読者を陶酔させる完璧なラストだ。加えて、2巻で描かれる武士道に続く“伏線”も張られているのが見事。

 と、ここまで4作品を紹介した。作品を読んでそれに酔うと同時に、その底辺を流れる彼の無意識から自決に繋げて考察してみるのもおもしろいだろう。

 三島が若かった頃の世相は戦争一色。青年たちの中には、「自分は20代で国の為に死ぬ」という意識があったようだ。実際に死んだ者が多数いる中で、死なずに敗戦を迎えてしまった者たちは、自我が崩れるほど戸惑っただろう。「生き残ってしまった、恥だ」という気持ちすらあったかもしれない。

 三島は、この年齢層にしては珍しく戦地に行っていない。風邪と肺結核の誤診なのか、徴兵検査に不合格になっているのだ。自分には大義ある死が訪れる機会はない、と本人が思っていたかどうかはわからないが、このことはおそらく死ぬまで頭から離れなかったのではないか。

 せっかくの節目とステイホーム。しばし現実を離れて、三島由紀夫の世界に思考を巡らせてみてはどうだろうか?

文=奥みんす

>>こちらも読みたい
「三島さんは、いいヤツでした」三島由紀夫没後50年。生前の友人たちがその素顔を語る