【ある意味表紙詐欺】エッチなラブコメと思いきや、優しい世界に号泣『アラサー女勇者とショタオーク』

マンガ

公開日:2020/5/31

『アラサー女勇者とショタオーク』(斎創/KADOKAWA)

 失礼ながら、表紙を見たときは想像だにしなかった。この本に、こんなに泣かされるなんて。

 5/28に新刊『アラサー女勇者とショタオーク』を上梓した斎創氏は、ツイッターラブコメの旗手ともいえる存在だ。30万以上のフォロワーが集うアカウントでは様々ラブコメが供給され、タイムラインを潤している。

 本書は、表題作のおねショタラブコメに加え、魔王×ホムンクルス、顔が怖い白魔道士×心の声がダダ漏れな剣士の2シリーズが収録された作品集。勇者、オーク、魔王、魔道師…なじみあるファンタジーの世界観で、いちゃいちゃコメディがくり広げられる。

advertisement

『アラサー女勇者とショタオーク』の主人公は「屈強なオークにめちゃくちゃにされてぇ」と性欲をもてあましながら酒を煽るアラサー女勇者。彼女はある日、迷子の少年オークを拾い、なんやかやで一緒に魔王討伐の旅に出ることに。エロ同人の読みすぎ気味な勇者は愛すべきダメっぷりで、子ども扱いされたくなくて背のびするオークはいじらしく、これぞおねショタ!な魅力が詰まった作品だ。

『魔王とホムンクルス』はほのぼのおじロリ(?)。若い子希望という主君の意を汲みすぎて幼体で生み出されたホムンクルスと、独身子無し36歳でこどもの扱いにとまどう魔王、彼女が魔王にじゃれつくたびに「魔王城で児ポが…」と通報する秘書官の3人が織りなす、ゆるゆるな魔王城の日常が描かれる。なお魔王は大のおねショタ好きでロリへの興味はない。

「顔が怖い白魔道師と心の声が聞こえる剣士」は、治癒魔法が得意なのに、顔が怖いせいで誰ともパーティが組めない白魔道師と、彼女にぞっこんな剣士の物語。私が泣いてしまったのはこの話である。自分に自信がもてない魔道師は、剣士の「かわいい」「めっちゃすこ」とダダ漏れな心の声を浴びるうちに、だんだん可愛くなっていく。似合わないと思っていたお花のヘアピンをつけることができた彼女を、剣士がまたかわいいと褒めちぎる。なんと優しい世界だろうか。

 本書はどのシリーズにも、人と人のあいだに生まれうる優しさが通低音のように流れていて、読む者の心にしみ込んでくる。この書籍版ではツイッターでは描かれなかった、各カップルの結末が描かれていて、それを読んで私はふたたび泣いた。ぜひ疲れた夜、優しさに満ちたラブコメにどっぷり浸かってほしい。