最弱種族の主人公が一番強い魔物を目指す!ニコニコ静画で話題を呼んだ青春ファンタジー漫画『魔物学校』

マンガ

公開日:2020/6/8

『魔物学校』(岩ちん:原作、プレジ和尚:漫画・漫画原作/講談社)

“一番”になる。とても難しいことだ。周りより何倍も努力しても必ずなれるとは限らない。特にもともと向いていないことや、周りから無理だと言われ続けてきたことに対して、人は目指すことすら諦めてしまいがちだ。僕もそうだった気がする。「どうせ頑張っても一番になんかなれっこない」「なれなかった時、カッコ悪いだけだ」と変に悟った人生を過ごしてきた方である。

 しかしここ最近、僕は「“一番を目指すこと”自体が大切なのではないか」と考えるようになった。そして、書店で手にした『魔物学校』(岩ちん:原作、プレジ和尚:漫画・漫画原作/講談社)という漫画に、図らずも背中を押された。

 本書の舞台は、人間と魔王軍の戦いが休戦となり11年経った魔界である。

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 魔界では人間との再戦の準備が進められ、学校では魔王直属の配下「三魔神官」の候補生が三魔神官になるための訓練を受けている。

 主人公のグミもその候補生の一人だ。夢はもちろん一番の三魔神官になることである。

 しかしグミには、大きなハンデがあった。それは彼が種の中でも最弱と呼ばれるスライム族の魔物であるということ。そのため、グミは幼い頃から「ザコモンスター」と蔑まれ、周りからの評価も低い。ただグミは努力を惜しまない。一番強い三魔神官になり、スライム族の強さを周りに認めさせたいからだ。

 そんなグミに憧れを抱き、そばで見守っているのが本作のヒロイン、メデュー子だ。

 メデュー子も幼い頃から「落ちこぼれ」と呼ばれ、いじめられていた過去を持つ。1巻では、自分の強みを見つけられないメデュー子が、グミの励ましによって“自分だけの一番”を見つけようと、決意を固めるシーンが描かれている。グミと共に、落ちこぼれのメデュー子がどのように成長していくのか。とても楽しみだ。

 そして本作には、もう一人欠かせないキャラが登場する。グミのライバルであり、先代三魔神官・グーシオンの血を受け継いだシオンである。彼もグミと同じように三魔神官を目指し、努力を重ねてきた魔物だ。一見、大金持ちで名誉もあり、努力とは程遠いおぼっちゃまだが、作中で描かれる彼の生活はいたって庶民的だ。

 1巻では、彼が三魔神官を目指す理由とともに、そのバックグラウンドが明かされる。彼がなぜ一番を目指しているのか。それは本書を手にして知っていただきたい。

 本書はもともとニコニコ静画で話題を呼び、連載が始まった作品だ。

 その最たる理由は設定にあるのだろう。「人間が主人公、魔物が敵」といった設定の漫画は多いが、「魔物が主人公、人間が敵」という設定は珍しい。

 そして何より、彼らが“一番を目指す”姿は、とてつもなくカッコいいのだ。

 大人になると、一番を目指してがむしゃらに青春する機会は少ない。本作はそんな青春時代を想起させ、一番を目指す大切さを思い出す良いきっかけになるはずだ。

文=トヤカン