繊細すぎて生きづらい…なのになんだか笑えるHSP漫画家の日常。落ち込みやすい自分のトリセツを作ろう!

暮らし

更新日:2020/12/12

『繊細すぎて生きづらい〜私はHSP漫画家〜』(おがたちえ:著、みさきじゅり:監修/ぶんか社)

「HSPって最近よく聞くけど、詳しく知りたい」
「そもそもHSPって、一体どういうもの?」
 最近よく話題にあがる「HSP(Highly Sensitive Person)=とても敏感な人」について、手に取りやすいマンガという形で語るのが、『繊細すぎて生きづらい〜私はHSP漫画家〜』(おがたちえ:著、みさきじゅり:監修/ぶんか社)。本書は、自身もHSPであるという漫画家・おがたちえさんの、「自分の日常を知ってもらうことで、読んだ人の心が少しでも軽くなれば」という思いから生まれた1冊です。

気を使いすぎて疲れる…に「あるある」の声多数

 おがたさんの趣味は観劇や映画鑑賞。誰かと一緒に行くと、鑑賞中も「ちゃんと楽しんでくれているかな…」と気になってしまうため、ひとりで行くことが多いそうです。そして会場の席は、通路側を確保します。それは「途中でトイレに行きたくなって、他の人に迷惑をかけたくない」から。いよいよ本編が始まると、登場人物に感情移入しすぎて大感動。鑑賞後は疲れてしまいぐったりすることが多いのでした…。

 また仕事でも、編集者からのメールに書かれていた「ネームに誤字脱字があります。提出前には再度確認するようにしてください」という文面に過敏に反応。「他にも何か気に障ることをしちゃった?」「もしかしてマンガがおもしろくなかった?」などと、メールに書かれた文面の裏まで、想像力を(悪い方に)働かせてしまいます。そして、すぐに謝ったり、あるいは妙にへりくだった返信をして、その自分の返信内容について反省したり…というくり返しを経験することも。

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 こういったエピソードを読んで、「わかる!」「これって私のこと?」と感じた人は、本書内にある「HSPセルフチェックテスト」の参照をおすすめします。HSPには「処理の深さ」「神経のたかぶりやすさ」「強い感情反応と共感力」「感覚の繊細さ」といった大きく4つの特徴があるので、人によって当てはまるものがあるかもしれません。

 本書では、HSPの特徴に関する解説や、それについての対処法もわかりやすく示されています。たとえば先ほどの、おがたさんがメールの文面の裏まで想像するというのは、HSPにおける「処理の深さ」という特徴的兆候。これの対処法のひとつは、「それは私の想像なだけ」「誤字脱字が発見できてよかった、感謝しなきゃ」といった“他の視点をもつ”ということです。HSPが生きづらいと感じるさまざまな特徴や対処法についても、本書で確認してみましょう。

親子そろって「繊細さん」だと、子育ても大変?

 おがたさんには小学生の息子さんがいます。ある日、おがたさんが読んでいたHSPの本をのぞいた息子さんは、「ぼくのことが書いてある!」と驚きながら自己申告したそう。子どものHSPは、「HSC(Highly Sensitive Child)」と呼ばれます。HSPは生まれつきの性質なので、HSCも5人に1人はいることになります。

 とても繊細だったり、とても心配性だったり…と一見、「育てにくいのでは?」と思われがちなHSCですが、これは言い方を変えると、とても真面目で良心的だということ。人の気持ちを察することもできるし、その慎重な性格から、危険なことをしないという安心感もあるといいます。HSCの子どもにとっても、自分のことを理解した上で接してくれる人がいれば、安心して過ごすことができるので、自分の特性を伸ばしていけそうです。

HSPでない人にも知ってほしい。その理由は…

 本書には、おがたさんのリアルな日常エピソードとともに、監修のHSP専門家みさきじゅりさんによる説明・アドバイスがふんだんに盛り込まれており、読めば確実にHSPについての理解が深まるでしょう。HSPの人が読めば、心がふっと軽くなるでしょうし、「自分はHSPではないだろう」という人が読んでも、自分の周囲の人に対して「あの人はもしかするとHSPかもしれない。それなら対処法は…」と、より良い人間関係を築くためのヒントが得られるはずです。

 何より大切なのは、HSPの人もそうでない人も、HSPを「理解して受け入れる」こと。HSPのおがたさんが、「自分の弱さや失敗までマンガにするのは恥ずかしかったけれど…」と感じながらもありのままを伝えてくれる本書が、多くの人の心に届きますように。そう願わずにいられない1冊です。

文=水野さちえ