共感しすぎて疲労困憊、空気読みすぎでパニック…社会不適合なダメ人間だと思った私は、HSPだった!

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更新日:2020/12/12

『ダメ人間だと思ったらHSPでした!』(染井アキ/産業編集センター)

“どーも、はじめまして染井アキと申します。32歳、女、独身のしがない一般人です”

『ダメ人間だと思ったらHSPでした!』(染井アキ/産業編集センター)は、なんとも肩の力の抜けた書き出しから始まる。HSPとは、「Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の頭文字を取った言葉で、外部からの刺激や、相手の感情や雰囲気、あるいは目に見えないエネルギーなどに敏感で、疲れやすい人のことを指す。

 染井さんは、これまで派遣社員を含めて6社で勤務し、働いていない期間もあった。現在は無職で、昼夜逆転生活、1日1食で、お昼からアルコールを摂取することも…。「自分はダメ人間だなぁ」と思って暮らしてきたが、とあるきっかけがあってHSPのことを知った。すると「私のことやんけ!」と当てはまることが多く、夢中になって調べたそうだ。

 そのきっかけは、本書の担当編集者である「福永さん」だった。染井さんは、“社会に適合できる普通の人”になるのを諦め、夢見ていたエッセイストになろうと書籍の企画を提出したところ、福永さんに「もしかしたら…染井さんはHSP?」と言われたというのだ。

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 本書では、具体的なHSPエピソードが綴られている。染井さんは、人の気分に左右されてしまうことが多い。もっとも困る感情は「怒り」だ。周りの空気を読みすぎてしまうため、人の怒りを感じるだけで、それが自分に向けられているわけではないのに自分の仕事が手につかなくなってしまう。

“怒っている人がいれば、自分になんら関係がないことでも、その雰囲気を目の当たりにするだけで、頭の中がパニックになります”

 また、仕事中は常に緊張状態にあり、自覚がないまま疲れ切ってしまうことにも困っている。休みの日は身体が起き上がらないことも日常茶飯事で、そんな生活を続けているうちに自分のキャパシティを超えてしまい、会社を辞める流れになってしまった…。

“不眠、頭痛、吐き気、胃痙攣、ぎっくり腰、過敏性腸症候群、耳の不調、アレルギー、肌荒れ、過食、食欲不振等々ストレスの出方ってこんなにあるんだなと毎回感心するほど経験してきました”

 一方で、“着物を見ると胸がドキドキしたり、涙が出たりします”というこれまたHSPらしい個性についても語られる。美しいものを見るだけで感動してしまう。些細なことが気になってしまうのは生きづらさにもつながるだろうが、感受性が豊かだと捉えれば良い側面でもあるのだ。

 本書には、「もしかしたら私もHSPかも?」と疑問に感じた人にも役立つよう、HSP研究の第一人者であるエレイン・アーロン博士によるHSPのセルフテストも掲載されている。

 染井さんは、「HSPを知って心の底から救われたと思っている」と語る。もしあなたも些細なことが気になる…と思い当たる節があるならば、おすすめしたい1冊だ。

文=えんどーこーた